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第47話
「──わっ、わりぃ!今、綺麗にしてやるからっ」
荒い息遣いがおさまって、目を開いた先輩は慌てた声で言った。多分、僕の顔についた自分の精液に焦ってるんだと思う……僕は気にしないんだけど……
ベッドサイドに置かれた箱ティッシュを手にした先輩に、声をかける。
「あ……拭かなくていいよ?……それより、お風呂に入ったほうが早いし……」
僕の提案を聞いた先輩はぱっと立ち上がると「分かった!」と言うなり、急いで浴室へと向かった。
先輩の姿が見えなくなると、僕はほっと息をついた。
よかった……思ってたとおりに先輩は動いてくれた。
「ごめんね、先輩」
先輩は優しい人で、僕のこと……大事にしてくれている。
それは分かったし、信じてる。信じてるけれど、どうしても今日は一つになりたい。
どうしても先輩が欲しいんだ。
──僕のナカに…
右手を自分の顔に這わすと、ぬるりとした感触。先輩が出してくれたものが、顔についている。
それをそっと、人差し指と中指で擦りとった。
それから身体を少し起こして、両足をぱっくりと左右に開く。鏡があったらいいんだけれど、先輩の部屋にはないから……左手を伸ばして自分の孔を探り当てる。
『……俺は大事な奴につらい思いをさせるくらいなら、気持ちいいことも我慢するよ』
──前に、先輩が言ってくれた言葉。
先輩が僕のナカに出さないのは、僕の身体のため。お腹を壊さないように……身体に負担をかけないように……
でも、今日はダメ。今日はどうしても、ナカに先輩が欲しい。
そうでなければ、自分は先輩のものなんだと胸を張って言えない……安心できない。
さっきローションを使ったから、先輩はこのあと必ず、僕の身体をナカまで洗う。
だったら、少しの間だけだし……すぐにきれいになるし……入れてもいいでしょ?
お腹を壊すことなんて、ないでしょ?
僕はゆっくり深呼吸をして昂る気持ちを抑えると、精液を掬い取ったままの2本の指を、おしりの孔に押し込んでいった。
「………あっ………あっ……あ………あ……」
初めて自分で指を挿れたナカは想像以上に熱くて……いつも先輩は、この熱を味わっているんだ……
怖くないぎりぎりの深さのところで指を止めると、壁に精液をこすりつける。それから声を出さないように唇を噛みしめて、そろそろと指を引き抜いていった。
「はっ……あんっ…」
ちゅぽんと指が抜け出ると、慌てて浴室のドアを見る──先輩の姿はまだない。
ほっとしてもう一度ベッドに転がると、右手で下腹部を撫でた。
──ここに、先輩がいる。
悪いことをしているはずなのに、何だかとても嬉しくて……
ずっと願っていたことが叶ったはずなのに、何だかとても苦しくて……
思わず涙が溢れては、滑り落ちて……シーツに吸い込まれていった。
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