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カーテンの外に出た太一は 頭は冷静になれても 心身の方はそうはいかなかった 先程のさくらを思い出し 熱く胸を焦がす 甘く誘う淫靡な香りに とろけそうな程心も身体も疼く いつもは大人しく小さいさくらが あんなにも大胆に誘い 誘惑する… まるで小悪魔… …して…… 熱っぽい声に誘われ あの柔らかな唇に 触れてみたかったと 太一は少し後悔した その時、二組の客が中を覗いた 「…!」 太一はナツオを呼ぼうとカーテンを少し開けた しかし… 太一の目に映ったのは イスにもたれるさくらに、覆い被さる様に さくらの唇に ナツオの唇が触れている光景だった…… それはまるで 王子がお姫様の眠りを覚ます 魔法のキス…… とても健全で とても美しい…… 「…マジか」 太一はカーテンを静かに締めた

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