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第5話

俺はただ、子供が笑ってあったかい飯を食える場所を俺は必死で護ってきた。 この食堂を開く時、その主旨と食材の寄付を…と話に回った際色々言われたが今じゃ総菜屋の常連になってくれてたりするから笑い話だ。 「他所者にやるもんはない。」 「偽善者」 そんな心ない言葉を浴びても、俺はこの場所を作りたかった。 どうしても。 子供食堂が開いてる時間はあまりお客さんが来ない。 団欒を楽しんで、という周囲の配慮らしいが本音は解らない。 いや、疑心暗鬼だな… みんなの話も聞けるしそっちの方が有り難いんだけど… 悪い方にばかり考えるのは失礼だ みんなに手伝ってもらいながら洗い物を済ませているとカウンターに置きっぱなしのスマホが着信を知らせる。 「要兄ちゃんのスマホ鳴ってるよ。」 「本当だ。 ありがとう。 …もしもし」 『あ、要? 久しぶり。 今大丈夫?』 「うん。 久しぶりって先週も連絡きたけど。 どうした?」 手伝ってくれていた子にありがとうと言いながらスマホを手に2階へと続く階段に腰掛ける。 変わらない心の落ち着いた声。 あの、柔軟剤のにおいを思い出す。 「うん。 妹の就職が決まった。」 「え、マジかよ。 おめでとう!」 『ありがとう。 それに一人暮らしはじめるんやって。 あんな小さかったのに。』 心は所謂元彼だ。 喧嘩別れをした訳でもない。 なんで別れたのかすら思い出せない。 だけど、はっきり解るのは別れたという事実。 「寂しいんだろ。 お兄ちゃん。」 『…少し。』 「でも、妹の成長は嬉しい?」 『うん。 すげぇ、嬉しい。』 それでもいまだ連絡を取り合い愚痴を言い合い、相談し合い、笑い合う。 不思議な関係。 それを心は腐れ縁だと言う。 腐れ縁。 鎖縁。 断ち切れない縁。

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