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第11話

振り返った心は視線を逸らしたまま、口端を上げた。 貼り付けた顔だ。 「話の途中にごめんな。 麦茶飲んだら、惣菜売ってくれるか」 「それは構わないけど……」 「こっちか? こっちは大丈夫や。 時々、息が出来んくなんねん。 だから、此処に息をしにくるだけや」 息 人は呼吸をやめたら死んでしまう。 それなのに、心はそれが出来なくなると言うのか。 なんで、心ばっかりがそんな思いをしないといけないんだ。 世の中もっと苦しんでる人がいるんだと責められても、それでも、心には笑っていて欲しい。 それだけ、なのに。 それは願いすぎなのか…? 「好きだから付き合った筈なのにな」 麦茶の入ったグラスに手を伸ばす心は誰に言うでもなく言葉を溢した。 また、そんな顔で笑うんだな

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