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第10話

Side尚 「……………おまえ…なんだよ どうかしたのか?」 「な、なにがです?」 「あ?ほら、涙…………」 「あ……え、えへへ……恥ずかしいな……」 知らない間に涙がこぼれてしまっていたみたいで…………僕の頬はぐっしょり濡れていた そんな僕の顔を彼は心配そうに覗き込む 心配させてはいけない………… そう思いグシグシと目元を強く拭う 「おいおい、そんなに強くするな 痛めるだろ?ばか」 「んむぅ……でも、だって…………………… ヒック……う、あぅぁぁああっ…………」 「お、んと…………な、なくな……な?」 僕の手をどかすと、彼はよしよしと目元をスリスリと親指で優しく拭った そんな優しい仕草にさらに涙があふれる…… さらに泣き出した僕をどうすればいいのか分からない、と言った感じの彼 あわあわと慌て、僕を優しく抱きしめ、ポンポンと背中を叩いてくれる そんな彼の優しさに胸が締め付けられる なんだろう……この感じ…………安心する………… この人は……お母さんのような…落ち着く空気を持っているみたいだ………… この人の優しい暖かい雰囲気に涙がこぼれて止まらない…… きょうちゃんといる時は、緊張ばかりしている僕 こんなに安心することがないので、安心して身を預けている自分自身に戸惑ってしまう…………………… しかし、戸惑っている心とは裏腹に、すっかり安心した僕は肩の力が抜けて、へにゃりと朔也さんに抱きついてしまう 「おぉ……大丈夫か? くくっ、疲れたか んー、ゆっくりしたいよな? うし、お前のベッド、借りるぞ」 「うぅ………………んぁっ?…………んにゃ!?」 泣き止まない子供のような様子の僕に、優しく笑いかけてくれる彼 そんな僕を抱き上げて、そのまま一緒にベッドに寝転がる 寝転がった時の彼の顔の近さに驚きの声が漏れてしまう 「くくっ……そんな驚くなよ ほら、ガキなんだから寝てろ」 「ガキじゃないです…………もう……19…………」 「十分ガキじゃねぇか…………ほら、寝てろ」 トントンと優しく背中を叩いてくれる彼 その手の温かさに、いつもとは違い、安らぎを感じる 安心しすぎたのか、瞼が重たくなってきた 僕はスリスリと朔也さんの胸に擦り寄ると、そのまま抱きついて眠りにつく いつもみたいに、 迷惑じゃないだろうか……とか 相手を伺うようなこともなく…… 僕なんかに優しくしてくれるなんて……とか 相手の裏を読むようなことも全くなかった 口調は厳しいのに……その人の優しい手に縋りたくなる あぁ…………この人が……僕を好きになってくれたらな………………と、浮気者のようなことを思いながら、暗い闇に落ちていった………………

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