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第12話
Side尚
「……い……おい…………おい!尚!」
「ひゃいっ!…………へ?」
「違うんだ、響也
俺が悪いんだよ」
きょうちゃんの怒鳴り声が聞こえて飛び起きる
寝ぼけた目を擦りながら、目のピントを合わせると
虎の尻尾を立たせてグルル……と唸って、怒っているきょうちゃんと
僕を庇うようにして、きょうちゃんと対峙している朔也さんがいた
僕は目を擦りながら、一生懸命怠けている頭を動かそうとする
どうしてきょうちゃんがこんなにおこってるのか、全く心当たりがない僕は、困惑して朔也さんのシャツを後ろでにぎりしめる
そんな僕の姿を見て、いっそう怒ったきょうちゃんは、僕の首をつかみ、床に叩きつける
「……い゛……ったい…………」
「おい!響也!
お前……なんてことするんだ!」
「うるさいんすよ!朔也さん!黙れってんですよ!
浮気なんかいい度胸だな!尚!
………ふざけんなよ!なぁ!」
「…………う、浮気……?」
浮気…………その単語に頭が混乱する
浮気なんか、自分はした覚えがない
きょうちゃんにされた覚えはあっても、自分がしたことなど1度もないのだ
どうして、浮気をしたと勘違いされたのかはわからなかったが
どうにか誤解をときたい、と思った僕は、彼に近づき、足に縋るようにして言い訳を始めた
「僕……浮気してないよ?きょうちゃ…………
う゛ぁ…………」
「口答えすんな!クソが!」
「響也!違うんだ!
ただ、疲れて寝てしまっただけで!
俺らはなにもしてない!」
僕はきょうちゃんに前髪を掴まれ、前髪からは肌が裂けたのか、血が垂れてきた
あぁ……血が垂れてるな、と思った頃には意識が朦朧とし始めた
喧嘩している2人の声が遠くで聞こえる
たまに、きょうちゃんが僕を責めている声も、聞こえた
クズが、ビッチが、淫乱が、尻軽が!
と罵られる声に、涙が零れて止まらない
どうして……こんなに怒られてるんだ…………
なんで……僕だけこんな目に…………
ポロポロと涙を流している僕
そんな僕のことなんか、気にも留める様子がないきょうちゃん
彼と朔也さんが、怒鳴りあう声が部屋に響く
僕を責めるきょうちゃん
僕を庇う朔也さん
僕をあいだに挟み、喧嘩をするふたりがとうとう、殴り合いにまで発展してしまった
「くそがっ!!」
「がぁっ!いてぇ、じゃねぇかっ!」
「あ、い、ぃや………………」
止めたい……とは思う…………
けど、人間の僕は非力で…………
虎とユキヒョウの戦いには首を突っ込めない…………
しかし、血を流し始めた二人を見て、どうにか止めさせないと…………と考える…………
あぁ………………誰か助けて……………………
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