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第27話
「朔也さん!こっちです!!」
マンションの目の前で、車に乗った男の子がブンブン!と手を振っていた
「おう!……さぁ乗って、尚くん」
「は、はい!」
促されるまま、車に乗るとそのあとに続いて朔也さんが乗ってくる
勢いよくドアが締まり、車のエンジンがなり始める
「俺の家に…………頼む」
「了解っす!」
車が走り始めた、その瞬間だった………………
『…………っ尚!!!!!』
「………………え?……うそ…………」
後ろをむくと、今にも泣きそうな顔のきょうちゃんが車を追いかけてきた
セットされた髪もぐちゃぐちゃになるほど必至に………………
なんで、どうして追いかけてくるの…………
尚!と何度も必死に呼びかけてくる声に、まだ愛されているのではないか、と勘違いしそうになってしまって…………………………きょうちゃんの元に帰りたくなってしまう
……そんなことしたら地獄に逆戻りなのはわかっている………………
けど………………まだ愛されているかもしれない……だとしたら、戻らなきゃ………………でも……
戻りたい気持ちと、地獄から逃げ出したい気持ち……………………
その2つの気持ちがごちゃごちゃになって怖くなってしまった僕は…………必死に耳を塞いで、その声から逃げた………………
そんな僕の様子を、朔也さんが横で複雑そうに見つめていたなんてこの時の僕は気づかなかったんだ…………………………
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