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第28話
「さ、上がって」
「お邪魔します…………」
「先部屋入ってて、お茶持ってくるね」
あの後、ついに地獄から逃げ出すことに成功した僕は今、朔也さんの部屋にお邪魔している
朔也さんの家は広く、とても綺麗だった
広すぎてどこに座っていいかわからなかった僕は、とりあえず観葉植物の横に座った
そうしてしばらくじっとしていると部屋の扉が開き、朔也さんが頭を出した
キョロキョロと何かを探すように部屋中を見ている
何してるんだろう……と気になったため、尋ねると………………
「なにしてるんですか?朔也さん」
「ぎゃぁっ!…………尚くんここにいたのか……
どうしてそんな隅にいるの?
ほら、こっち座って」
どうやら、僕を探していたようだった彼は
これをかけるとビクゥ!と肩を跳ねさせて驚いてしまった
僕がそんな彼の様子にあわあわしていると、彼はどうしてそこに座ってるんだ!と心配そうに言って、ソファまで僕の手を引いた
ポスッとソファに僕が座ると朔也さんは僕の隣に座ってテレビをつけた
『……〜〜〜〜!』
『…………〜!?』
「……………………」
「……………………」
テレビの音声だけが部屋に響いて、とても落ち着く
テレビを見ていると、いつの間に旬の人が変わったのか…………知らない人が出ていた
「え、YouTuberってテレビ出てるんですね」
「最近たまに見るね」
「…………へぇ……」
「あれ、この人のドラマ終わってる……
最終回見たかったな」
「…………すごい面白かったよ
今度DVD出たら、借りる?」
「あー、それもいいですね
え、でも見たんですよね?」
「あー、終わりの方だけ、また見たくなった」
「………………ふふ……」
ぽつりぽつりと少ない会話を何度も続ける
2人で静かにテレビを見て、たまにお互いコメントして………………
そんな静かな時間が、全然退屈じゃなかった
むしろ、何故か幸せを感じていた
少ししか会話してないのに朔也さんの人柄の良さがよく分かる
ソファに座る二人の距離は、いい距離だし
たまに僕に気遣うようにさりげなく、話をふっかけてくれる
…………こんな静かな時間を、きょうちゃんと過ごしてみたかったな…………
とふとした瞬間に考えてしまい、相当きょうちゃんに依存しているな…………と自分で呆れてしまう
いつか……いつかきょうちゃんのことを全く考えないようになって、新しくいいひとを好きになれるといいな………………と心の中でこっそり思った
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