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第6話
あーー目が痛い……
昨日擦りすぎたせいで目が腫れてしまい、ヒリヒリする。
俺はため息を吐きながらトボトボと、学校へと歩いていた。
「朝練どうすっかなぁー……
ぜってー皆、この目心配するだろーな……」
学校に到着して、体育館前で立ち止まる。
朝練には出たい。
でもチームメイト達は、皆優しいからきっとこの腫れぼったい目を見たら、必要以上に心配するんだろうな。
皆の心配顔を想像しながら俺は、また一つため息を吐いて踵を返そうとしたその時、突然後ろから誰かに飛び付かれた。
「うおっ!! いてーな、誰だ!?」
「影山くんおはーーーーッス!!」
後ろを見る前に分かった……この声は日向だ。
日向は俺の腰に足を巻き付けて、両手は首に回し、ガッチリとしがみついてきた。
「日向ボケェ! 放れろおめーんだよお前!!」
「いーじゃん。筋トレだと思って体育館の中まで連れてってよ!」
「ざけんな! 何がいーんだよボケ!」
思いっきり体を揺らして振り落とそうとするが、日向はそれ以上の力を込めて抱き締めてくる。
「このバカ力!! 止めろ、ぐるじい!
首絞めんな!」
「力が強くないと良いスパイク打てないだろ」
「まあ、それもそーだな……
じゃなくて! 重いんだよ、早く降りろボケ!」
「いーじゃん、俺とお前の仲だろ」
なんて二人で言い合っていると、急に後ろに引っ張られ、体が軽くなった。
「うわっ!」
「ギャッ!!」
転けそうになったのをなんとか持ちこたえて後ろを見ると、そこには月島が日向を猫掴みしていた。
まあ、月島は非力だから、日向の足は地面についているけど。
「朝っぱらから何戯れてんの?」
「ギャー! 月島放せよ、邪魔すんな!」
「やだ」
「やだじゃない。放せぇー!」
「ほんと朝からうるさいね。呆れるぐらい」
今度は二人が言い争いを始めてしまった。
なんか月島に助けられた。
あいつが俺を助けるなんて……ここはやっぱり礼を言った方が良いのか?
なんか月島に礼を言うなんて癪だけど、仕方ない。
コミュニケーションは大切だ。
「つ、月島、サンキューな……」
心の中で真っ向コミュニケーションコミュニケーションと呟きながら礼を言うと、月島は目を大きく見開いた後、プイッと顔を背けた。
「王様が礼を言うなんて、明日雪でも降るんじゃない?」
「あぁ!? 今は夏なんだから降るわけねーだろ!
つーか、王様ってゆーな!」
いつも通り嫌みを言う月島を、思いっきり睨み付けてやる。
せっかくコミュニケーションだと思って礼を言ったのに、つくづく嫌なやつだ。
「…………
月島お前さー、なんか顔赤くね~?」
「は?」
すると、黙って俺達を見ていた日向が、唐突にそんなことを言ってきた。
月島の顔が赤い? 熱でもあんのか?
「月島なんだよお前、風邪か?」
こいつのことは気にくわないけど一応チームメイトだし、心配だけはしといてやるか。
月島は俺から顔を逸らしているから見えないけど、確かに少し耳が赤いような気がする。
「風邪? まあ、僕は王様と違うからね、風邪ぐらい引くよ。
ほら、バカは風邪引かないってゆーし」
「はぁ? どー言う意味だコラ?」
「そのまんまの意味だよ」
またも月島と言い合いをしていると、日向が顔をしかめながら声を大にした。
「ちげーだろ月島! その赤いのは風邪じゃないだろ!?
少しは素直になれば?」
「何言ってんの意味不明? 日向も本当にバカだよね~。
僕が話しかける前の日向の方が顔赤かったと思うけど?」
「な、なな、そ、そんなことねーよ!
いーからちゃんと顔見せろ、こっち向け月島!」
「痛いなもう! 止めてくれる!」
日向はやはり感心するほどジャンプ力がある。
背の高い月島に飛び付き、顔を掴んで俺の方に向かせる。
あ、本当に顔真っ赤だ。
つーか、日向も真っ赤だ。
なんなんだこいつら……?
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