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第8話
及川side
「岩ちゃん、俺……飛雄を襲っちゃった」
青城の学食にて、俺と岩ちゃんは昼ご飯を食べていた。
岩ちゃんはネギうどん、俺はいつも通り牛乳パンを頬張っていた。
今日の午前中の授業……全っ然集中できなかった!!
頭の中は飛雄のことでいっぱい
昨日のカレー食べてる時の飛雄可愛かったなぁ~~
とか、
飛雄の唇柔らかかったなぁ~~
とか、
嫌だとか言いながら飛雄、俺とキスしてる時、気持ち良さそうだったなぁ~~
なんて授業中に考えてたら、勃ちそうになった……
勃ちそう……に……じゃな・く・て!
俺はなんて最低なことをしてしまったんだぁーーーー!!
ただただ、飛雄と一緒に居たかった、久しぶりに間近で見る飛雄は可愛くて、一緒に下らない話なんかが出来るだけで
それだけで良かったのに……
俺は我慢出来なかった。
飛雄の涙、あんな顔見たくなかった。
本当に最低だった。
自己嫌悪に陥って、頭の中がグチャグチャになって、でもどうしたらいいかもう分からなくなって……
俺は一番信頼出来る大親友の岩ちゃんに助けを求めようと、相談することにした。
岩ちゃんは俺の言葉を聞いて、啜っていたうどんをブブーーーーっと豪快に吐き出した。
「な、ななな、な、な、何言ってんだくそ川ぁぁぁぁ!!」
「うわっ! もお~~岩ちゃん汚いよぉ!」
「テメーが突然変なこと言うからだろボゲェ!」
「おばちゃーん、なんか拭くもの下さーい!」
学食のおばちゃんにタオルをもらって、岩ちゃんが飛ばしたうどんを拭き取る。
「なんかお前、一人暮らし始めてから女子力アップしたな」
「うるさいよ……いーんだよ。
飛雄がバレー以外何にも出来ないから、俺がこういうこと出来た方がいいでしょ。
結構料理の腕も上がったんだよ。
昨日飛雄、俺が作ったカレー食べてくれたんだよ!
すごい美味しそうに食べてくれてね、可愛かったなぁ~」
カレーを食べてる時の飛雄の、嬉しそうな顔を思い出しただけで、無意識に口角が上がる。
そんな俺を見て岩ちゃんが、驚いたように目を見開いた。
なんだよその目は?
「お、お前らいつの間に付き合いだしたんだ?」
「へ?」
岩ちゃんの言葉で頭上に、沢山のクエスチョンマークが浮かぶ。
俺の反応に岩ちゃんは眉間に深いシワを寄せた。
まあ、いつも眉間にシワ寄せてるけどね。
そんなにしてるとあとがついちゃって、戻らなくなるぞ☆
「いや、お前の料理を影山が食べたとか言うから……てっきりもう付き合いだしたのかと思った」
「…………」
「つーか、お前やっと影山に告白したんだな」
「……岩ちゃん、俺が飛雄のこと好きって知ってたんだ」
別に隠してた訳じゃあ無いけど、知られていたことに少し恥ずかしくなった。
さすが岩ちゃん、鋭いな。
俺が俯くと、岩ちゃんはフンッと鼻で笑った。
「いや、バレバレだろ。
お前の気持ちに気づいてなかったの影山ぐらいで、金田一までもがお前が影山を好きなの知ってたからな」
「ま、マジで!?
てゆーか、一番気付いてほしい相手が気付いてないって……なんなの」
「まあ、影山だからな。
そんで影山に告白して、まさかフラれたのか?
で、ショックのあまり思わず襲っちまった?
………………
て、テメーっ!」
持っていた箸を乱暴に置いて、恐ろしい顔で勢い良く立ち上がった岩ちゃん。
それに俺も立ち上がって、慌てて宥める。
「は、ハーイ岩ちゃん、落ち着いて、落ち着いて!
座ろう、ねっ、座ろう!」
岩ちゃんは今もなお眉間にくっきりとシワを寄せ、思いっきり口を歪ませたまま、取り敢えず座ってくれる。
一つ安堵のため息を吐いてから、俺も椅子に座った。
昨日のことを説明しようとしたら、また飛雄の泣き顔を思い出して、胸がズキズキと痛み出した。
「俺……その……飛雄を襲っ、ちゃって…………でも、告白は、その……してない」
飛雄に告白…………
そんなこと出来ない。
俺は男で飛雄も男。
この恋は叶ってはいけない恋……
告白なんてしたら飛雄を困らせてしまう。
中学の頃からずっと好きだったけど、この気持ちを抑え込んできた。
駄目だ、飛雄を欲しいなんて思っちゃあいけない。
この気持ちを消さないと……
そう、ずっと必死に消そうと思ってたけど……出来なかった。
それでも、好きで……
でも気持ちは伝えられなくて
ならせめて、友達?
そんな関係じゃあ満足出来ないけど……
でも、でも、傍にいることだけ
それだけでいいから、許してほしかった……
それだけで良かったのに……
俺は……
「好きすぎて、我慢…… 出来なかったんだ」
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