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第10話

いつもは授業中は居眠りしているのに、今日は全然眠くならなかった。 原因は分かっている…… 部活中も全然集中出来なくて、澤村さんに何回も注意された。 最悪だ…… 及川さんのことになるといつもそうだ。 こんなに俺のペースを乱す人はもう、あの人しかいない。 いったいどれだけあの人は俺を悩ませ、苦しめれば気がすむんだ。 「お疲れっしたーー!!」 なんとか午後練が終わり、チームメイト達は着替えるためゾロゾロと部室へ向かって行く。 良かった、なんとか1日が終わろうとしている。 早く、早く何もかも忘れて眠りにつきたい。 まあ、忘れることなんて出来ないんだろーけど。 及川さんは一生俺を、悩ませ苦しめるんだ…… 「おーーい影山! 今日も肉まん食って帰るだろ?」 ボーーっと考え事しながら着替えていた俺に、日向が声を掛けてくる。 いつもなら二つ返事でOKするけど、今日は…… 「ワリぃ……今日はパス」 皆でワイワイ肉まんなんて食べれる気分じゃあない。 目を逸らしながらそう言うと、日向が強い力で腕を掴んできた。 「駄目だ! 肉まん食って帰るぞ!」 「ハァ? だから今日はいいって! 腕イテーよ、放せ……」 ため息を吐きながら日向を見ると、すごい真剣な眼差しで俺を真っ直ぐ見据えてくる。 止めろよ何なんだよ、その目は? 「駄目だ。 なんでそんな目が赤かったのかちゃんと教えてくれるまで、今日は帰さねぇ」 「日向……」 真剣な眼差しから目が逸らせず、しばらく見つめ合っていると、ポケットの中に入れていた携帯が震えた。 「メールきたから放せ!」 日向の手を強く払い除けると、舌打ちが聞こえた。 それにイライラしながら、受信されてきたメールを確認すると、その送り主は…… 《飛雄、もう部活終わった? 大事な話があるんだ。烏野の校門の前で待ってる。 いつまでも待ってるから》 及川さん!! 烏野の前で、及川さんが待ってる……? 会いたくない。 会ったらまた嫌がらせされるかもしれない。 及川さんは俺のこと嫌いなはずなのに、なんで会いに来るんだよ? どうしたらいいんだ? 携帯を持ったまま微動も出来ない俺を不思議に思ったのか、日向が服の裾を引っ張ってきた。 「誰から?」 「だ、誰でも良いだろ? とにかく俺、肉まんは食わねーから。 もう少し自主練しに体育館戻る……」 時間ギリギリまで自主練してたら遅くなるし、そのうち諦めて帰るよな? そんなことを考えながら、また体育館に向かおうとすると、日向がついてきた。 「影山が残るなら俺も残る!」 「んでだよ! お前は家遠いだろーが! さっさと帰れ」 「嫌だ。 さっき言っただろ、お前の目が赤い理由を教えてくれるまで、帰らないって!」 目が赤かった理由…… そんなの教えられるわけないだろ。 「バレーのDVD 観てて寝不足だったって言っただろーがボゲェ!」 「嘘つくな!! 俺はお前が心配なんだよ……」 「日向…… もう勝手にしろよボケ……」 日向の真っ直ぐで少し悲しそうな瞳に、なんて言ったら良いのか分からなくなって、俺は逃げるように体育館へと戻った。

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