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第15話
及川side
飛雄に完全に拒絶され、俺は涙を止めることが出来なかった。
男が泣くなんてカッコ悪いけど、でも泣いてしまうほど、飛雄のこと本気で好きだったんだ。
飛雄のこと諦めるために、沢山の女の子達と付き合って、傷付けてきた。
本当に最低だったな……
沢山の人を傷付けて、こんな最低な奴フラれて当然だ。
それでも、この恋が叶わないと分かっていたとしても
やっぱりまだ好き……
簡単に忘れることなんて出来ないよ
本気なんだ…………
カッコ悪いけど、俺はこの気持ちを仕舞い込むことが出来ず、悲しい感情が止めどなく溢れてくるのをどうすることも出来なくなって、
また、岩ちゃんを頼るため、アパートに着くなり携帯を手に取った。
「岩ちゃん……俺、告白する前に、フラれちゃったよ……」
『はぁ? 告白しなかったのか?』
「うん。気持ち伝えようと思ったんだけどその前に、完全に飛雄に敵だと、危険人物だと思われたみたいで……
全然話聞いてもらえなかった」
『お前本当にそういうことになると要領悪いよな。
めんどくせぇ~……』
岩ちゃんは怒ったような声音で言った後、何度も面倒臭い面倒臭いと言い続けている。
「そんなに言わないでよ~
本当に落ち込んでんだからさぁ~……」
そう言って俺はテーブルに伏せながら、ため息を吐いた。
岩ちゃんは俺のより更に長いため息を吐いた。
『俺はお前ら絶対上手くいくと思ってたんだけどな……
お前が変なことせずに、さっさとちゃんと告白してれば、こんなめんどくせぇことにならずにすんだのにな……』
「上手くいくわけないじゃん。
俺はずっと飛雄に意地悪してきて、本当に嫌われてたんだからさ~
初めから分かってたよ……この恋が叶うわけないって」
『なんで影山に嫌われてるって分かるんだ?』
「え? なんでって……嫌われてたでしょ?」
俺の言葉に岩ちゃんが、フンッと鼻で笑ったのが分かった。
『影山見てたら分かるだろ!』
「わ、分かんないよ」
岩ちゃんの自信満々そうな言葉に、不安な心と、それでも期待したいという気持ちとで入り交じった。
『よく思い出してみろよ。嫌いな奴にあんなキラキラした目で近付くか?』
「俺だったら近付かない……」
中学の頃の飛雄は可愛くて無邪気で、いつも俺に纏わりついてきて。
邪険にして突き放しても、視線はいつも傍にあった。
俺はいつもその視線にドキドキしてたっけ……
『嫌いな奴の家に行ってカレー食うか?』
「最初、飛雄逃げたけどね」
『俺だったら本気で嫌いなら、相手を殴ってでも逃げるけどな』
「飛雄は岩ちゃんみたいに野蛮人じゃないからね!」
『うっせぇボゲェ!
それでもやっぱり嫌いなら、付いて行かねーと思うけどな。
好きって気持ちがあるから、お前を信じてたから、だから、酷いことされてショックで泣いたんだと思う』
「俺、飛雄の信頼を失っちゃった……」
『もう一回行ってこいよ。
影山を本気で好きなら、土下座してでも話を聞いてくれって頼み込んで、ちゃんと自分の気持ちを伝えてこい』
「飛雄、聞いてくれるかな?」
『お前の土下座次第だな』
「そうだね……もう一度頑張ってくるよ!」
本当に本気で飛雄が好きだから、ちゃんと俺の気持ちを伝えたい。
こんなにも飛雄が好きなんだって、この想いを知っててほしい。
たとえこの恋が叶わなくても、やっぱり気持ちを伝えるって大切なことだよね。
「岩ちゃんありがとね。
岩ちゃんに相談して良かった!」
『つーかさー、その土下座してるところ見てみたいわ。
モテモテの及川くんが好きな人に必死にすがりつくとか、ゼッテーおもれーだろーな!』
岩ちゃんは俺が土下座しているところを想像したのか、こっちの耳が痛くなるほど大きな声でバカ笑いしている。
せっかく良いこと言ってくれたのに、このバカ笑いで全てが台無しだよ岩ちゃん……
「もーー、俺は真剣なんだよ!
人の本気の恋路で遊ばないでよ!」
『まあ、頑張ってこいよ』
「うん。ありがとう!」
岩ちゃんが親友で本当に良かった。
俺はその事が本当に嬉しくて、上がっていく口角を戻すことが出来なかった。
そこで、プーーーーっと狭い部屋にチャイムが鳴り響いた。
「あれ? 誰か来た」
『あ? もしかして、影山か?』
ちょっと笑いを含んだような言葉に、俺も思わず笑ってしまった。
「もーー、そんな都合よくトビオちゃんが来るわけないでしょ~
岩ちゃん少女漫画の読みすぎだよ!」
『少女漫画なんて読んだことねーよ』
二人で笑いあっていると、またプーーーーと、チャイムが鳴らされた。
「あ、ゴメンね。ちょっと切るね」
『おう、さっさと出ろ。まあ、頑張れよ。
じゃーな!』
「うん! じゃーね~」
そう言って通話終了をタップしてから、俺は急ぎ足で玄関へと向かった。
向かっている最中にも鳴らされ、俺はハイハイハイと言いながら急いだ。
「ハイ、お待たせしました!」
玄関の扉を笑顔で開けた俺は、相手の顔を見た瞬間、大きく目を見開くことになった。
え? うそ……でしょ?
「及川さん……」
俺の瞳には、今一番会いたかった大好きな人、飛雄の姿がうつった。
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