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第17話
及川さんが俺のこと好き……
「本当……です、か?」
頬を伝う涙を優しく拭って、及川さんは俺が見たかった笑顔を、やっと見せてくれた。
なんて眩しいんだろ……
中学の頃
最初の頃は俺にも見せてくれていた。
でも……いつからか俺には笑わなくなって……
睨まれて、避けられて
他の人には見せているのに、俺には見せてくれなくて
いつも遠くから見つめてた
でも今日の、俺だけに向けられたこの笑顔は、今まで見たどの笑顔よりも綺麗でキラキラしていて
眩しかった……
「本当だよ。
中学の頃からずっと好きだった」
え……中学の時から?
本当に?
ずっと嫌われてるって思ってて、すごく辛くて
でも違ったのか……?
嘘だろ? だってあんなに俺のこと避けていたのに
それでも及川さんはずっと俺のこと好きだったと言うのか?
そんなの
「有り得ない……」
「えっ!? 有り得なくないよ!
本当に俺は飛雄のことが好きなんだよ!」
「でも……だって、及川さんは……」
「信じて。
ずっと、ずっと飛雄が好きだったんだ」
信じたい……だって俺の方が、ずっとあんたのこと好きだったんだから
必死に何度も俺のこと好きだ好きだと言い続けてくれる及川さん。
有り得ない、嘘かもしれない。
そう思いながらも、ずっと好きだった人にそんなこと言われたら
気持ちがどんどん溢れて、止まらなくなる
「ほ、本当に、信じても……いいんすか?
嘘だった、とか、言いませんか?」
震える唇、止まらない
嘘だなんて言わないでくれ!
あんたの口から好きだって、そんな言葉が聞けるなんて
嬉しすぎて、夢なら覚めないでくれ!
そう願わずにはいられない
そんな俺の言葉に及川さんの瞳が、揺らめいたのが分かった。
それに気付いて、思わず目を見張る。
瞳を潤ませながら、それでも笑顔を浮かべて、彼はそっと俺の頬を撫でた。
その感触に胸が高鳴って
とても温かくて、自然と唇の震えが止まった。
「嘘じゃない。信じて飛雄
俺はずっと、飛雄が好きだったんだよ
俺の顔をよく見て」
そう言われて、彼の顔を改めて真っ直ぐ見つめる。
潤んだ瞳、それでも真剣な眼差しで彼も真っ直ぐに俺を見つめてくれていた。
強い光を宿している、そんな瞳
「嘘ついてるような顔に見える?」
「み、見えません」
「そうだろ? だって、本気だから。
俺は本気で、飛雄が好きだから」
本気……
本当に及川さんは、俺を
なんだこれ……夢みたいだ……
あの及川さんがこんな真剣な瞳で、俺のこと好きだなんて
「だから、お願い。俺の気持ち否定しないで。
好きだよ……
好きだからずっと傍にいてほしい」
傍にいてほしい、なんて
そんなの、こっちから願いたいぐらいだ。
だって、昔から俺の方がずっと及川さんのこと、追いかけていたじゃないか。
あんたに追い付きたくて、近付きたくて
傍にいたくて……
「傍に、いてもいいんすか?」
「俺がそうお願いしてるんだよ?
だから、ねっ、頼むから
傍にいて……」
そう囁いて、ゆっくり、優しく
抱き締めてくれた
嬉しい……
及川さんの温もりも、その言葉も、笑顔も……
みんなみんな嬉しくて、幸せだと思った。
及川さんは少し体を離して、俺の顔を覗き込むように見つめてから、本当に愛しそうに頬を赤らめて、微笑んで、
ゆっくりと顔を近づけてきた。
それに応えるように、自然と笑みが溢れて……
そっと瞼を閉じた。
触れ合う2つの唇……
あなたが望むなら ずっと傍にいさせて下さい
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