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第37話

心と心は繋がってる。 なんで今そんな恥ずかしいこと言うのか分からないけど、 でも、そうだ 学校が違って傍にはいられないけど……俺達は気づいてなかっただけで、本当はずっと両想いだったんだ。 だから、今まで離れていた分、これからはずっと 心と心は 繋がっているんだ。 及川さん……あなたもそう思って、笑ってくれているんだろ? それが分かって、すごく嬉しくなった。 嬉しくて嬉しくて、ずっと笑っていると、突然勢い良く後ろに引っ張られた。 「うわっ!」 「何ずっとへらへらしてんの? ムカつくんだけど……」 月島の苛立ちを含んだ声が、頭上で響く。 スルリと腰に腕を回され、何故か後ろから抱きしめられる形になっていた。 目の前の及川さんの笑顔が怖く見えて、焦りながら後ろを睨む。 「月島ボゲェ!! なんだよ、放せ!」 「大王様、日向だけじゃない。僕もいること忘れないで下さいね。 こう言うこと言うの何かすごくムカつくけど、でもちゃんと言っとかないといけないと思いましてね。 相手が大王様でも、手加減なんてしませんよ」 「お、俺だって絶対手加減なんてしない! 負けるもんか!!」 「は? 何言ってんだお前ら?! いいから放せよ月島!!」 本当に意味が分からない。 月島の腕の中から逃れようとすると、反対に腕に力を込められた。 隣に立った日向も、俺の手を握ってくる。 何なんだよお前ら…… 及川さんはさっきまでの優しい笑顔を消して、瞳から鋭い光を放ち、怪しく口角を上げた。 「それじゃあ、二人は俺のライバルってことだね?」 「そうですね」 「ゼッテー負けねぇ!」 二人と及川さんが睨み合うなか、俺はこの状況が理解出来ず、ただ首を傾げて戸惑うばかりだった。 「そっか……なら、 俺だって手加減しないよ!!」 小さく意地悪い笑いをこぼして、突然大きな声を出した及川さんが、ただただ目を泳がすことしか出来なかった俺の腕を、力強く強引に引っ張った。 勢い良く引っ張られて、スルリと月島の腕の中から抜け出せた。 俺は救出され、及川さんの腕の中へと戻る…… 「飛雄、おかえり」 「おっ、及川さん……」 ドキドキしながらも二人の方を見ると、悔しそうにこちらを睨み付けて、何とも言えない表情をしていた。 「手加減しない。飛雄は誰にも渡さないから。 心も身体も……」 「そうやって余裕ぶっこけるのも今のうちですよ。 絶対、吠え面をかかせてやりますよ」 「フフ……楽しみにしてるね」 及川さんは不敵に笑って、二人に見せつけるように俺の頬に優しくキスをした。 また人前でキスをされて、恥ずかしくて顔がジワジワと熱くなった。 「お、及川さん……」 「俺そろそろ行かないと遅刻しちゃうから、もう行くね。 また午後練の後迎えに来るからね」 二人を一瞥してからそう言って笑って、及川さんは手をふった。 及川さんの後ろ姿をずっと見つめて見送っていると、突然月島の服の袖で口や頬を拭われた。 それが地味に痛かった。 「ぶっへグっっ! イテーな月島、何すんだよ!?」 「ごっめんねー、王様の頬があまりにも汚かったから、つい拭きたくなっちゃって」 棒読みで言われた言葉に苛立ったが、月島の口は笑ってるのに、目が全然笑ってないことに気づいて一瞬怯んでしまった。 「汚れてなんかねーよ…… つーか、さっきの話なんだよ? 手加減するとか負けねぇとか、バレーのことか? だったら絶対手加減なんてすんなよ!! 手加減なんてしたら、ぶっ飛ばすからな!」 及川さんは俺の恋人だけど、それと同時に絶対追い越したい、負けたくない相手でもある。 だから、バレーの試合とかで仲間が手加減して負けるとか、そんなの許せねーよ。 そんなことを思いながら二人を睨んでグッと拳を握っていると、二人はお互いに顔を見合わせた後何故か大袈裟に吹き出された。 「な、何笑ってんだボゲェ!!?」 「いや、ゴメンゴメン! 俺達は絶対手加減なんかしねーよ! 大王様なんかに絶対負けねぇよ!!」 「そうそう。 バレーでも、勿論それ以外でもね」 二人はなんでかすごく嬉しそうに笑って、校舎に向かって歩き出した。 それ以外ってなんだ? と、首を傾げながら二人の後を追った。

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