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第38話

及川side あの後俺は、めっちゃくちゃ急いで青城に戻ったけど、朝練には間に合わず。 しかもすでに一時間目が始まっている時間に到着した。 でも、でもね 一時間目の数学教師は女性だったから良かったんだ! 申し訳なさそうに教室に入って、首を傾げて眉を下げ、目をパチパチさせながら先生に 「遅れてすみません。 俺、悪い生徒ですね……先生の授業に遅れるなんて。 俺、先生の授業大好きなのに……」 な~んて言えば先生は顔を赤くさせて 「お、及川くん! あなたは悪い生徒じゃないわ! 大丈夫よ、先生も及川くんのこと大好きだから、あなたを怒ったりしないからね♡ 次は気を付けるのよ♡♡」 「は~い、気を付けま~す! 先生ありがと!」 周りの男子生徒達はこの会話を聞いて、嫌な顔をしていた。 女子生徒は先生を睨んでた。 先生にもモテる男でごめ~んねっ! こういう時にイケメンってお得だよね~♪ これを岩ちゃんに見られたら、確実に殴られるだろーな。 と、まあ、冗談はこれぐらいにして…… 「いぶぁぢゃんんんんんんんんんんっっっ!!」 「あーーーーーーウゼーうるせぇークソ川!!」 俺は休憩時間になるなり、岩ちゃんの所へと飛んだ。 岩ちゃんに抱き付き、泣きつく。 「んだよクソ川! ウゼーなお前。 鼻水つけんなよボゲェ!」 「あ……ゴメン、もうついちゃったウヘペロロ☆」 「ざけんな……」 岩ちゃんはプルプル震えながら俺を睨み付ける。 そんな岩ちゃんを無視して、本題に入る。 「そんなことよりどーしよ岩ちゃん! 飛雄が飛雄が!!」 「人に鼻水つけときながら、そんなことってなんだボゲェ…… 早々と影山にフラれたのか? お前があまりにもウゼーから」 「ちっがうよ岩ちゃんっ! 知らなかった飛雄があんなにモテるなんて…… 烏野のチビちゃ……10番と11番が飛雄のことが好きだって宣戦布告してきたんだ!!」 俺の言葉に岩ちゃんは一瞬驚いた顔をしてから、何故かニヤリと笑った。 「へぇ~~、影山モテるじゃね~か。 何だかんだ言ってあいつ、顔良いし、可愛いところあるからな。 モテるだろーとは思ってたよ。 ま、及川。精々フラれないように頑張れよ!」 「ちょっとぉ~~! 不安になること言わないでよ!」 岩ちゃんは意地悪く笑いながら、俺の肩を叩いてくる。 確かに飛雄は可愛い。 そんなこと、俺が一番分かってるよ。 『飛雄は誰にも渡さない』 『手加減なんてしないよ』 『楽しみにしてるね』 なんて……年上で恋人の余裕を二人に見せようとしたけど。 本当は、不安で不安で死にそうだ。 俺だって、飛雄と同じ学校に、 ずっと傍にいたいよ。 心と心は繋がってる…… そう思ってる、思いたいけど、 やっぱりそれは、端から見たら強がりにしか見えなくて。 飛雄が好きすぎるから不安で、あいつの相棒でチームメイトで、一緒の学校に通える、 俺なんかより長く飛雄の傍にいられる チビちゃんとメガネくんが死ぬほど羨ましい…… 今頃、飛雄何してるかな…… チビちゃん達とやっぱり一緒にいるんだよね? 羨ましい ライバルが傍にいて、恋人である自分が傍にいられないなんて。 自信も余裕もないよ…… ずっと飛雄とチビちゃん達が笑い合っているとこばっか想像してしまい、さっきからため息ばかり吐いている。 すると、突然頭に何か強い衝撃が与えられた。 「いっっっったぁーー!!?」 「ウゼー辛気臭い顔しやがって! こっちまで気が滅入るじゃねーか。 そんなんじゃあ、本当に影山を盗られちまうぞ!!」 岩ちゃんがグリグリグリグリグリグリと俺の頭に拳を押し当ててくる。 すごく痛い。 頭と一緒に心もどんどん痛くなってゆく。 「い、痛いよ、い、わちゃんっ! 分かってるよそんなこと!! それでも、俺はずっと飛雄の傍にいられない。 長く傍にいられる、チビちゃんやメガネくんを飛雄が好きになっちゃったらどーしよって不安で仕方ないんだよ!!」 痛くなるほど瞼を強く閉じて、大声を出し、一気に捲し立てる。 そんな俺に岩ちゃんは、グリグリしていた手で今度は俺の髪を少し乱暴に掻き回した。 「お前、そんな下らねーこと考えてたのか。 さっき言ったのは冗談だべ。 影山なら大丈夫だ!」

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