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第40話
及川side
放課後部活が終了し、俺は急いで着替える。
早く、早く烏野に!
飛雄に会いに行かなくちゃ!
「おい及川、お前なんでそんな急いでんの?
今日、どっかで食って帰んないのか?」
あまりにも急ぎすぎて手が震えて、いつもやってるネクタイ結びが上手く出来ない。
あーーもぉーーこれじゃあ、反対に時間がかかってるよ!
そんな俺にまっつんが半笑いで声をかけてきた。
俺は絡まるネクタイに目線を向けたまま、質問に答えた。
「あーーうん。
今日はこの後用事あるからぁ~」
「へぇーー……あっそぉ」
どーでも良さそうに返事をしたまっつんに、頬を膨らませる。
なんだよ、どうでもいいならそんなこと聞いてこないでよ!
今急いでんだから!
「及川はこれからデートなんだとよ」
「えっ! デート!!」
ふぅーーーー、やっとネクタイ結び終わった。
なんて思ってたら、岩ちゃんの爆弾発言。
そんなこと言ったら皆興味津々になって、余計に飛雄のところに行くのが遅くなるじゃん!
その間に、チビちゃんとメガネくんの魔の手が飛雄に!
案の定皆はニヤニヤしながら、俺の周りに集まってきた。
「んだよ及川ぁ~、この前彼女と別れたばっかなのに、もう新しい彼女かぁ?」
「イケメンさんは羨ましいねぇ~
あぁーーーームッかつくぅ!」
「及川さん、次の彼女もサラサラ黒髪ショートですか?」
ブーブーうるさいまっつんとマッキーの横にいた無表情の国見ちゃんの言葉に、俺は目を見開いて固まった。
「確かに及川さんの彼女って、黒髪ショートが多いですよね。
ショートヘアーが好みなんですか?」
国見ちゃんの言葉に金田一も便乗して、あからさまに興味ありますと言う顔で聞いてくる。
まあ、好みと言うか……飛雄、だよね。
飛雄のことがずっと忘れられなくて、無意識に告白してきた子の中にいた、黒髪サラサラショートばっかを選んでたみたい……
いつの間にかそれが好みだと思われて、告白して来るのが皆サラサラショートの子だけになっちゃったってだけの話。
まあ、ショートが好みなんじゃなくて、飛雄が好きなだけなんだけど。
ずっと飛雄を求めてたから、だから長続きしなかったんだよね……
わざわざ俺のために髪を切った子もいて、あれは本当に申し訳無かったな……
「おいおい及川く~ん?
何考え込んじゃってんのぉ~?
次の彼女も黒髪サラサラショートなのかな?」
ニヤニヤしながらマッキーが、俺の目の前でヒラヒラと手を動かしてくる。
てゆーか、1つ気になる事があるんだけど……
確かに元カノは黒髪サラサラショートの子が多かったけど、元カノ皆がそうなわけじゃない。
皆は俺の好みはサラサラショートヘアーの女の子って思ってただけで、別に黒髪じゃない子ともいっぱい付き合った。
なのになんで国見ちゃんは、黒髪って言ったんだろ?
あ、もしかして……国見ちゃん気付いてる?
「うん、そうだよ。
今付き合ってる人は、黒髪サッラサラのショートだよ」
国見ちゃんを真っ直ぐ見つめて、満面の笑みを見せつける。
国見ちゃんはゆっくりと目を閉じて、そしてまたゆっくりと目を開いてから口角を上げた。
「へぇ~~、そーですか」
「うん。黒髪でサラサラでショートで背が180あって、よく唇尖らせてて、切れ長の綺麗な目をした子だよ。
ずっと好きだった俺の初恋の人!」
「なんだそこ子!! モデルかなんかか?
イケメンはそんなすごいのと付き合えるのか!!」
まっつんとマッキーの羨ましそうな眼差しに、笑みをこぼす。
金田一はずっとわくわく顔をしていたが、俺の話を聞いた途端、難しそうな顔をして首を傾げた。
岩ちゃんは額に手を当てて、呆れ顔をしている。
ごめんね……俺この次で、もっと呆れられちゃうな……
「俺が付き合ってるのって、烏野の9番。
影山飛雄なんだけどね♡
今から飛雄とデートだから、行ってくるね!!」
「は?
はああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぉぁぁぁあぁあーーーーっっっ!?!!!」
その言葉に金田一とマッキー達が、目をこれでもかと言うほど見開いて絶叫した。
案の定岩ちゃんは頭を抱えながら、こちらを睨んでいる。
ごめんね岩ちゃん。
そして、国見ちゃんは……
今までに見たこともないような顔で笑っていた。
いつもあまり感情を面に出さない子だから、その顔が珍しくて、思わず俺も笑ってしまった。
たく…………先輩をからかうのは本当に止めてほしいよ。
「それじゃあ皆、俺と飛雄のこと応援よろしくね!」
そう言って俺は、飛雄のもとへと急いだ。
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