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第43話
『俺は飛雄の彼氏なんだし』
及川さんのその言葉に、嬉しさが込み上がってきて、思わずにやけてしまう。
そっか、及川さんは俺の彼氏か……
やっベーー!
ずっと好きだった相手が自分の彼氏だと周りに堂々と言ってくれるなんて、スゲー嬉しいんだけど。
きっと俺今、嬉しすぎて絶対変な顔してる。
そんな顔を見られるのが恥ずかしくて、にやけて上がって行く口角を必死に上がらないように押さえ込みながら及川さんを見ると、
及川さんはものすごく締まりのないニヤニヤ顔で、俺をガン見していた。
なんだよその顔は!
そんな顔で俺を見るなよ。
ますます恥ずかしくなるだろ!!
これ以上俺の顔も見られたくないし、及川さんのニヤけ顔も見ていたら恥ずかしくて、俯こうとした俺の腕を突然日向が引っ張ってきた。
「なあなあ影山、俺腹減った!
影山も減ってない?
坂ノ下商店に肉まん買いに行こーぜ!」
「へ? あ、まあ、腹は減ってるけど……」
腹は減ってるけど、それより今は及川さんと二人っきりになりたい。
なんて考えていたのに、
「じゃあ、行こうぜ!」
そう言って、日向が嬉しそうに微笑みながら、俺の腕を引っ張って歩き出した。
そんな日向の前に及川さんがめっちゃくちゃ素早く立ちはだかった。
「ちょっと! 飛雄は今から俺とデートすんの!
ラブラブカップルの邪魔しないでくれる!!
チビちゃん達はもう早く帰りなよ」
日向に掴まれている反対の腕を、及川さんが掴んできた。
ラブラブカップルってのは余計だけど、及川さんも俺と二人っきりになりたいと思ってくれてんのか?
その言葉にますます喜びを感じていると、何故か日向が悲しそうな顔をした。
「影山……俺はそんなに邪魔か?
俺はただお前と楽しく肉まん食べたかっただけなんだけど……
お前がどうしても俺のことを邪魔だと言うなら、俺は大人しく帰るよ……
俺はお前にとって、邪魔者?」
悲しそうな目で俺を真っ直ぐに見つめてくる。
えっ! なんだよその顔は?
邪魔者とかそんな……
日向の言葉に困り果てて目を泳がせていた俺に、今度は月島が少し眉を下げ似合わない顔をして、口を開いた。
「僕も王様と一緒に肉まん食べたいんだけど……
僕も邪魔者なの?」
は? なんだよそれ?
なんでこいつらこんな悲しそうな顔をするんだよ。
やめろよ……そんな顔すんなよ。
あーーーーもぉーーーー!
「だ、誰も邪魔者とか言ってねーだろボゲェ!
ほらっ、とっとと肉まん食いに行くぞ!!」
少しやけになってそう言うと、日向はニパッと満面の笑みを浮かべた。
月島も口角を上げている。
「おう! 早く坂ノ下商店に行こうぜ!!」
そう言って嬉しそうに笑う日向に引っ張られ、月島も一緒に歩き出した。
引っ張られながらチラリと及川さんを見ると、さっきまでのニヤニヤ顔を消して、思いっきり顔を歪ませていた。
ご、ごめんなさい及川さん……
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