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第45話

さっきから全然及川さんと話せてない…… 月島と日向の間に挟まれて歩いていて、二人がひっきりなしに話し掛けてくるから、なかなか及川さんの方を見るとこが出来ないでいる。 及川さん怒ってねーかな? せっかく烏野まで迎えに来てくれたのに、全然話せないなんて。 ずっと及川さんのことを気にしながら、二人の話に相槌を打っていると、いつの間にか坂ノ下商店についていた。 「影山はやっぱりカレーまん?」 「たまにはあんまんとかも食べてみたら? 甘くて結構美味しいよ」 「ん……カレーまんでもあんまんでもどっちでもいい……」 腹は減ってるけど、やっぱり及川さんのことが気になって仕方ない。 二人に適当に返事をしながら及川さんの方を見ようとしたら、日向に頬をつねられた。 「イッテェな! んだよ!?」 「余所見すんな! あんまんかカレーまんかちゃんと選べよ!」 「王様、ピザまんとかもあるけど。 どれにすんの?」 「あーもぉー……どれでもいいっつーの!」 「どれでも良いとか言ったら、キムチまんとかにしちゃうよ?」 「俺は、激辛キムチまんが良いべ。激辛肉まんとかないのか? 月島は激辛あんまん?」 及川さんが気になって気になってイライラしてきたところで、後ろからいつも聞きなれた声が掛けられた。 振り返るとそこには、にこやかに微笑んだ菅原さんと、烏野バレー部の皆がゾロゾロと立っていた。 「ようっ! お前らも先に来てたのか? どうせ来るなら、一緒に来れば良かったのにな!」 「え……ハハハ、そーすっね……」 田中さんの元気な声に、苦笑いで返事する。 俺は別に坂ノ下商店じゃなくても、及川さんと一緒ならどこでも良かったんだけど。 「で、日向達は何にするんだ? 今日は大地が奢ってくれるってさ! 早く好きなの選べよ」 なんて菅原さんが言いながら、ポンっと肩を叩いてきた。 不思議に思いながら顔を見ると、後ろの方に視線を向けながら笑っている。 なんだ? 首を傾げていると、突然強く手を握られ、引っ張られた。 「おわっ!」 「行くよ、飛雄!」 引っ張られた方を見ると、及川さんの姿が瞳に映った。 ああ……及川さんの手 及川さんの温もりだ…… 「ハイ!」 微笑んで頷くと及川さんも笑ってくれて、俺達は一緒に出口に向かって走った。 「あっ! 影山ぁ!!」 「あ~ハイハイ日向ぁ~、早く選ばないと反対にお前に奢らすべ~」 慌てたような日向の声と、菅原さんの笑いを含んだ声が聞こえた。 菅原さん、あざっす!! 俺は菅原さんに心中で礼を言ってから、前を走る大好きな人 及川さんの手を強く握って、走った。

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