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第47話
及川さんと一緒に帰ったあの日から、数週間たった。
あれから及川さんの家には行っていない。
及川さんは、
『一人暮らしだから遠慮せず、いつでも泊まりに来て良いよ。
だって飛雄は俺の恋人なんだからさ!』
なんて笑顔で言ってたけど、あんまり外泊すると母さんが心配するし、それに朝練とかもあるし。
きっと及川さんは俺が泊まったら、その日の朝は烏野まで送るとか絶対言ってくると思う。
それは嬉しいんだけど、でもやっぱり及川さんは青城の主将なんだから。
俺のせいで朝練に遅刻してほしくない。
本当はもっと及川さんと一緒にいたい、ずっと傍にいたいけど……
学生である俺達にはやっぱり無理だから、我慢しないといけないよな。
でもそれだと付き合う前と何も変わらないじゃないかって?
いや、そんなことねーよ。
放課後は一緒に帰ってるし。(何故か日向達も一緒に帰ってるけど)
毎日、メールのやり取りだってしている。
おはようからおやすみまで、次は何の教科の授業かとか、昼は何を食べたかとか。
時々写メなんかも送ってきてくれる。
メールが来る度、俺は及川さんの恋人なんだって実感出来る。
だから毎日が楽しくて、幸せなんだ。
それに、俺達の心と心は離れていても繋がってるから、大丈夫だ。
そして今も……
ピロン♪
及川さんからお昼ですよメールが来た。
《今岩ちゃんと教室で牛乳パン食べてるよ~♪
飛雄の今日のお弁当、おかずは何が入ってんの?》
そして、その文章の下に、岩泉さんの不機嫌そうな写メが添付されていた。
あまりにも不機嫌そうな顔に、思わず笑ってしまった。
よく写真撮らせてくれたな岩泉さん。
本当に二人は羨ましくなるぐらい仲が良いよな。
《岩泉さんスゲー顔してますね。
今日のおかずは唐揚げとか、グラタンが入ってます。
弁当食べた後に日向達とバレーする予定です!!》
そう打って送信ボタンを押してから、携帯を鞄の中にしまいこんだ。
さてと、さっさと飯食って、早くバレーがしてー!
なんて思いながら弁当を掻き込んでいると、近くで食べていた女子達の話し声が耳に入ってきた。
「最近彼氏とはどーなのよ?
前まで頻繁にメールしてたのに、最近してるとこ見ないけど」
「ああ、康彦? あいつとはもう別れたよ」
「えっ! なんで?
あんなに毎日嬉しそうにメールしてたのに」
「だって……つまんないんだもん。
学校違うからなかなか会えないし。
会ってもあいつ、サッカーの話しかしないんだよ!
デートだって休みの日も部活があるとか言って、全然してないし。
それに……」
「それに?」
「デートはもちろん……Hも最近してないんだよ!」
女子の言葉に思わず飲むヨーグルトを吹き出してしまった。
教室でするような話か!?
大胆な奴らだ!
「もう、ずっとこのままだったら私、欲求不満で死んじゃう!
って思ってたら……ある男子と会ってね……
俺が満たしてやろーか? って言われて」
「まさか、そいつとヤったの?!」
「それが康彦にバレちゃって、あいつがめちゃめちゃ怒ってきてさ……めんどくさくなったから別れた……」
「え~~~~何それぇ~~!」
本当に何それって話だった。
て言うか……この話、俺達とスゲー被ってるところ沢山ないか?
まず、学校が違うところだろ。
それから、放課後に一緒に帰ってる時もバレーの話しかしてねーし。
休みの日にはやっぱり部活はあるし。
それに……
俺達も、最近してない……よな?
及川さんモテるから、ヤろうと思えばいくらでも相手居そうだし……
いやいや、俺は及川さんを信じてる!!
俺達の心と心は離れてても繋がってるだ!
繋がってるけど……
やっぱり男だから……たまるよな……
及川さん、なんか性欲強そうだし……
まだ大丈夫だと思うけど、
こんな毎日が何ヵ月も続いたらさすがに、
……俺達も、
ヤバイかも?
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