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第50話
恋人同士は何をすれば良いんだ?
相手にどうしたら喜んでもらえる?
別れないために、どうすれば長続き出来るんだ?
及川さんのして欲しいこと、喜ぶことがしたい。
あなたの笑顔をずっと傍で見続けるには、俺はどうすれば良いんだろう。
俯いた俺の頭を、澤村さんが優しく撫でてきた。
「影山、及川と何かあったのか?」
「俺達に話してみ? 相談乗ってやるべ」
優しい声音でそう言われて、この二人になら俺の悩みを話したらすぐ解決しそうだと思った。
同じ男同士のカップルだし、こう言う相談を一番しやすい。
俺はクラスの女子達の会話を聞いて、自分がどう思ったか、そして他のカップルはいつも何をしているのか、自分は及川さんに何をしてあげれば良いのかを質問した。
「俺、誰かと付き合うの初めてで……」
「う~ん……他のカップルがしてることか……
カップルがすることと言えば、やっぱりセッ──」
「か、影山! カップルがすることと言えばデートだろ!?
それ以外に何がある?」
菅原さんが言いかけたことを、澤村さんが素早く遮ってから一気に捲し立ててくる。
及川さんとデート……あの及川さんとデート!?
やっぱりカップルと言えばデートなんだろうとは思ってたけど、デートっていったい何すりゃ良いんだ?
しかもあの及川さんとのデートとか……緊張する。
それに、及川さんはデートしなれてると思うし、そんな人を喜ばせることなんて、恋愛初心者の俺に出来んのか?
「あ、でも、休みの日にも部活あんのに、いつデートすれば良いんすか?」
「ん? 今週の日曜は午前だけだっただろ?
午後からでも十分時間はある」
「あ、そっか! じゃあその時に誘ってみます!
あの、それでデートって何すれば良いんですか?」
「う~ん、そーだなぁ~……改めて聞かれると難しいな。
でも別に特別なことはしなくて良いんじゃないのか?
手を繋いで歩くとかそー言う普通のことで良いんじゃないか?」
「でも俺達はもう手を繋いだことあるし……それぐらいで及川さんは喜ばないかと……」
「それって及川から繋いできたんだろ?
だったら、次は影山から繋いでやれよ」
お、俺から及川さんと手を?
なんか、スゲェ手汗かきそう……
なんて考えていると、菅原さんが何故か少し声のトーンを上げて喋りだした。
「それから、午後からと言うことは昼食は一緒に食うんだろ?
だったら、やっぱりカップルと言えば、ハイ、あ~~ん♡だろ?」
「ハイ、あ~~ん??」
「影山から及川にご飯を食べさせてやるんだよ! 『ハイ、あ~~ん。おいしい?』つってな!!」
菅原さんがハイ、あ~~んだと思しきジェスチャーをはしゃぎながら実演してくれた。
首を傾げながら態とらしい裏声を出して、目をパチパチとさせている。
「えっ! なんすかそれ……そんな声出せねーし、それになんか赤ん坊みたいっすね?」
「バッカだなぁ~、カップルならそれが常識だべや!!」
「常識なんすか?!」
「及川なら絶対喜ぶと思うよ。なっ、大地!」
「まあ、確かに及川は恋人からそういうことされたら、すごい喜びそうなタイプだよな。
でも、声までは真似しなくても良いからな……」
何それ、どんなタイプだよ?
つーかそれ、スゲー恥ずかしいんだけど……
「及川とずっと付き合いたいなら、それぐらい出来ないとな!
カップルに手を繋ぐのと、あ~~ん♡は必要不可欠だべ!」
「俺から手を繋いで、飯を食べらす……それが常識…………」
「そうそう! まずはそれぐらい出来るようになれよな!」
「……でもスガ……お前、俺に飯を食わせてくれたことあったっけ?」
やっぱり何故か楽しそうな菅原さんの肩を、澤村さんがポンッと叩いた。
そんな質問に菅原さんは一瞬目を泳がせてから、また俺に笑顔を見せる。
「ハイ、あ~~ん♡は必要不可欠だべ!」
「う、うっす! 頑張ってきます」
「おう! ガンバれ!!」
「なぁ、スガ? 俺にあ~~んしてくれたことあったかな?」
「うるさいな大地! そんなゆうなら今度やってやるよ!」
「えっ! マジで?!」
澤村さんのはにかんだ笑顔で納得した。
澤村さんがあんな嬉しそう顔するなんて……
やっぱりカップルにはハイ、あ~~んは必要不可欠なんだな。
俺も頑張って及川さんに喜んでもらおう!
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