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第54話
及川side
飛雄がチビちゃんに連れ去られた。
「えっ! 何でなの!?」
初デートなのに……
もう飛雄に誘われてから今日までの俺は、岩ちゃんにウザがられるほどはしゃぎまくってたのに……
すごくすごく楽しみだったのに……
飛雄を返してよチビちゃんっっ!!
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連れ去られた飛雄を追い掛けてたどり着いたのは、駅の近くにあるファミレスだった。
何で初デートでの食事がファミレスで、しかも二人っきりじゃないの?
しかもしかも、何で飛雄の隣が俺じゃなくてチビちゃん達なの??
狭いのに飛雄の右横にチビちゃん、左横にメガネくんが座っている。
どう考えても、その向かいに俺がポツンと一人で座るしか出来ないこの状況。
何なの? この納得出来ない、面接みたいな座りかた。
我慢出来ないんだけど!
「ちょっと! 俺達今デート中なんだけど。
流石に二人にさせてよ!
他にもテーブル空いてるとこあるんだから、どっか別のとこに行ってよ!」
「えぇ~~僕、動くの面倒くさいです」
「君、運動部だよね?
それなのに動くの面倒くさいってどーゆーことなの?」
人を小バカにしたような顔で、ヘラヘラ笑うメガネくんに苛立ちを隠せない。
「もぉ~~だったら、俺達が移動しよう。
飛雄、別のテーブルにうつろう」
「う、うっす!」
ずっと困り顔をして目を泳がせていた飛雄にそう言うと、飛雄は頷いて立ち上がった。
けど、そんな飛雄の手をチビちゃんが握って、動きを止めた。
……そんな気安く飛雄に触らないでよ。
「影山、皆で食べた方がやっぱり飯は旨いよ。
大王様は何にします? 影山は、カレー?」
いつも明るいのに、少しトーンの下がった声。
笑顔だけど、何処となしか元気がなさそうなチビちゃんに、俺は文句が言えなくなってしまった。
それには飛雄も気付いていたようで、俺がため息を吐きながら目だけで座ろうと合図すると、飛雄は頷いて座った。
「も、もぉ~……ご飯の時だけだよ。
俺はパスタにしようかな……」
「じ、じゃあ、俺は温玉のせカレーで……」
「王様はやっぱりそれだよね。
じゃあ、僕もたまにはそれ食べてみよっかな」
「んだよ? お前もカレーが好きなのか?」
「たまには良いかなって思っただけだよ。日向は?」
「じゃあ俺はハンバーグにしよ」
呼び出しボタンを押して、それぞれ注文をする。
待ってる間、俺はなんかしゃべりたくなくて黙ってたけど、目の前で話す三人にイライラしまくり。
初デートなのに本当に何なの……
最初に、飛雄とメガネくんの温玉のせカレーが来た。
目をキラキラさせてカレーをガン見する飛雄を可愛いなぁ~なんて思ってたら、横からスプーンが伸びてきて、トロンと飛雄のカレー皿の中にもう一個温玉が入れられた。
「王様、僕の温玉あげるよ」
「えっ!? お前食わねーの?」
「僕は絶対食べたいと言うほど、温玉が好きな訳じゃないから。
王様がそんな目をキラキラさせるほど好きなら、僕のあげるよ」
「ま、マジで? サンキュー……ありがとな!!」
メチャクチャ嬉しそうに目をキラキラさせて礼を言う飛雄を見て、微笑むメガネくんに苦虫を噛み潰す。
もしかして、飛雄に餌付けするために態と、温卵のせカレーを頼んだとかじゃないよね?
飛雄は本当に嬉しそうに可愛い笑顔で、メガネくんからもらった温玉を食べている。
それを今も微笑んで見つめるメガネくん。
何これ? なんか二人がデートしてるみたいになってんじゃん。
飛雄の彼氏は俺なのに……
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