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第55話

及川side 二人の間に穏やかな空気が流れていて、それにますますイライラした。 好きな物もらったからって、彼氏の前で他の男にあんな可愛い笑顔見せてんじゃないよ…… 嬉しそうにカレーを食べる可愛い飛雄を、カレーを食べながら横目で見るメガネくんにイライラしながら睨んでいると、チビちゃんのチーズインハンバーグが運ばれてきた。 俺のパスタはまだ来ない。 「温玉ってそんなに目をキラキラさせるほど旨いの? 一口ちょうだい」 ハンバーグを食べていたチビちゃんが、嬉しそうな飛雄を見て、ヒョイッとスプーンを伸ばして温玉を取って食べた。 「あ、温玉ってトロトロしてて旨いな。 卵がけご飯、温玉で作っても良いかもな」 「あっ、日向ボケェ! 俺の温玉返せ!!」 「いーじゃん、月島にもらって二つあったんだから、ちょっとぐらい。 だったら、俺のハンバーグやろうか? チーズが入ってるから旨いよ。 ホラ、あ~~ん」 「は? な、何で日向がそれやるんだよ! いらねーよ、持ってくんな!」 ハンバーグをホークに刺して、飛雄の口元へとさし出すチビちゃんに、眉間にシワを寄せて赤くなりながら首をふる飛雄。 「ホラ、影山、あ~~んしろって!」 「だから、いらねーって!」 ちょっとチビちゃん! 何やろーとしてんの? それだけは絶対許さない、許せないよ!! そこへ、ちょうど良く救世主パスタ様が運ばれてきた。 素早くそれをホークに巻き付け、素早くフーフーと熱々のパスタを冷まし、そして素早く俺は立ち上がった!! 「ハイ、飛雄、あーーん!」 「あ、え、及川さん! あ、あーーん!」 目を見開きながらも飛雄は口を開けて、食べてくれた。 顔を真っ赤にさせて、モグモグと動く口が愛らしい。 メチャクチャ可愛かった。 「俺が及川さんにあ~~んってしてあげたかったのに……先越された」 「なっ、何可愛いこと言っちゃってんの!!」 飛雄があ~~んってしてくれるのも良いけど、それよりも俺は、飛雄の方を食べたくなっちゃったよ。 モジモジと恥ずかしそうにする飛雄と、ニヤニヤが止まらない俺をチビちゃんが嫌な目で睨む。 すると、メガネくんがヘラヘラと口を開いた。 「大王様ぁ、日向が王様にあ~~んするのがそんなに許せなかったんですかぁ~? 自分はいっつもクラスとかの女子達に食べさせてもらってるくせに?」 「な、なんでそれ知ってんの!?」 もしかして、岩ちゃんが飛雄に言っちゃったの? なんて考えていたら、メガネくんがニヤリと悪い笑みを浮かべた。 あ、ハメられた…… 「あ~、適当に言ったのに本当だったんですね。 やっぱりモテるんですねぇ~大王様って。 羨ましい~。ねっ王様!」 いや~な顔で笑いをこらえる素振りを見せるメガネくんを、思いっきり睨み付ける。 そこで、さっきまで顔を赤くしていた飛雄が、暗い顔をして俯いた。 「そうですよね……及川さん昔からモテるし、彼女も沢山いたって言ってたから、俺があ~~んしたって嬉しくないですよね……」 「な、何言ってんの飛雄!」 「そりゃそうだよ王様。 王様なんかよりやっぱり可愛い女子にしてもらう方が嬉しいに決まってるでしょ」 「可愛い女の方が良い……?」 「何言ってんの、そんなわけないじゃん! 俺は飛雄の方が」 「もう良いです。及川さんがモテるって前から知ってましたし、今さらそう言うことでショックなんて受けませんよ」 そう言って飛雄は笑ったけど、悲しそうな瞳をしていた。 女の子達は皆友達だから良いだろうと思ってた。 でも、飛雄がチビちゃんにハンバーグを食べさせられそうになるのを見た時、それが嫌で、何故か悔しいと思ってしまって…… 飛雄も? 俺が女の子達から何かをもらってたら、ヤキモチやいて、悲しくなる? もしそうなら、俺は…… 今も悲しそうな瞳で笑う飛雄に、胸が苦しく締め付けられた。 「と、飛雄……ごめ」 「影山、行こう!!」 「えっ! あ、日向!」 俺が謝ろうとした次の瞬間、今まで黙っていたチビちゃんが突然大きな声を出して、飛雄を連れてファミレスを飛び出した。 「と、飛雄!!」

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