59 / 345
第58話
え?
頬にキスされた?!
なんで及川さんの元カノが俺にキスを??
「とびお、結構私のタイプかも。
好きになっちゃった♪」
楽しそうに笑う新藤さんの行動と言葉に、混乱してしまう。
俺のこと好きって意味分からない。
この人は前まで及川さんの彼女だったのに、なんですぐに出会ったばっかの俺を好きなんて?
戸惑って動くことを忘れていた俺の身体が、突然大きく傾いた。
「うぁっ!!」
気が付いたら俺は及川さんに抱きしめられていた。
及川さんの体温に、心臓がドキドキと脈打つ。
「飛雄は渡さないよ!
飛雄に手を出したら、女の子だろーが容赦しない!!」
及川さんの強声にビックリしながらも、渡さないって言葉に胸が熱くなって、口角を上げずにはいられない。
新藤さんはその声に一瞬怯んだような顔をしたが、直ぐ様ニッコリと笑った。
「どう容赦しないのか楽しみにしてるね♪」
「……チッ…………」
及川さんは思いっきり嫌な顔で舌打ちをしてから、無言で俺の手を引いて歩き出した。
そこで、日向が俺達の前に素早く立ちはだかった。
「待てよ!
俺だって影山を傷付ける大王様になんて、影山を絶対に渡さない!
行くんなら一人で行けよ!!」
強い瞳で真っ直ぐに及川さんを睨み付ける日向に、彼はそれよりも強い、恐ろしいほど鋭い眼光で睨み返した。
「飛雄は俺のものだ!
どけよ、怪我したくなかったら!!」
いつもより低いドスの利いた声と、鋭い瞳に日向は肩を震わせ、ゴクリと唾を飲み込んだ。
俺までもその声に、震えがきてしまうほどの迫力だった。
俺の手を引いて、固まって動かない日向の横を擦り抜けて早足で突き進む。
そこで後ろの方から話し声が聞こえてきた。
「ねぇ? 新藤さん、君本当は……」
「シー……待って。今はそれを言わないの」
新藤さんと月島が何か話しているけれど、それを聞く余裕もないほど強引に引っ張られ、
俺は必死に付いて行くことしか出来なかった。
ともだちにシェアしよう!