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第58話

え? 頬にキスされた?! なんで及川さんの元カノが俺にキスを?? 「とびお、結構私のタイプかも。 好きになっちゃった♪」 楽しそうに笑う新藤さんの行動と言葉に、混乱してしまう。 俺のこと好きって意味分からない。 この人は前まで及川さんの彼女だったのに、なんですぐに出会ったばっかの俺を好きなんて? 戸惑って動くことを忘れていた俺の身体が、突然大きく傾いた。 「うぁっ!!」 気が付いたら俺は及川さんに抱きしめられていた。 及川さんの体温に、心臓がドキドキと脈打つ。 「飛雄は渡さないよ! 飛雄に手を出したら、女の子だろーが容赦しない!!」 及川さんの強声にビックリしながらも、渡さないって言葉に胸が熱くなって、口角を上げずにはいられない。 新藤さんはその声に一瞬怯んだような顔をしたが、直ぐ様ニッコリと笑った。 「どう容赦しないのか楽しみにしてるね♪」 「……チッ…………」 及川さんは思いっきり嫌な顔で舌打ちをしてから、無言で俺の手を引いて歩き出した。 そこで、日向が俺達の前に素早く立ちはだかった。 「待てよ! 俺だって影山を傷付ける大王様になんて、影山を絶対に渡さない! 行くんなら一人で行けよ!!」 強い瞳で真っ直ぐに及川さんを睨み付ける日向に、彼はそれよりも強い、恐ろしいほど鋭い眼光で睨み返した。 「飛雄は俺のものだ! どけよ、怪我したくなかったら!!」 いつもより低いドスの利いた声と、鋭い瞳に日向は肩を震わせ、ゴクリと唾を飲み込んだ。 俺までもその声に、震えがきてしまうほどの迫力だった。 俺の手を引いて、固まって動かない日向の横を擦り抜けて早足で突き進む。 そこで後ろの方から話し声が聞こえてきた。 「ねぇ? 新藤さん、君本当は……」 「シー……待って。今はそれを言わないの」 新藤さんと月島が何か話しているけれど、それを聞く余裕もないほど強引に引っ張られ、 俺は必死に付いて行くことしか出来なかった。

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