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第66話
一人で勝手に勘違いして、怒って、俺のためになんて言って別れようとするなんて……
本当あんたバカだ
嬉しかったんだよ 愛しい体温が
渡さないって、傍に居てって言ってくれた
あなたの言葉が……
こんなにも震えるほど、お互いに相手を求めていたんだな……
この先、俺達の間に悲しいことや不安なことがいっぱい起こって、
迷って、喧嘩したり、すれ違ったりして
苦しんで、涙を流すことが沢山あるかもしれない……
それでも、涙の後は
「あんたが幸せにしてください」
「え?」
俺の言葉に及川さんが微かに揺れた。
あー……なんか泣きそう……それでも今、あなたの顔が見たい
ゆっくりと振り返り、及川さんと向き合う。
彼の瞳は、赤く潤んでいた……
きっと自分のも……
「さっき言ったじゃないですか。
俺のこと本気で好きなんでしょ?
好きな人の幸せを一番に考えるんでしょ?
だったら、余計なこと考えてねーで、
俺を幸せにすることだけ考えてろよ!!」
幸せにして……
他の誰かじゃダメなんだ
及川さん……あなたしか俺を幸せに出来る人はいないよ……
そっと及川さんの背中に腕を回し、強く抱きついた。
「飛雄……」
彼も俺の背中に腕を回して優しく抱きしめて、髪の間に指を差し入れ
長く息を吐いて俺の耳をくすぐった。
その暖かい感触に、視界がもっと滲んでいく。
「あの時も、あなたに抱きしめられて嬉しかったんだ。
あのキスされた後、俺を抱きしめてくれたでしょ?
嬉しかった……好きな人に抱きしめられて嬉しくて、思わず笑っちゃあいけないんですか?」
「…………え?
じゃ、じゃあ、あの時嬉しそうな顔してたのって……」
見る見るうちに、及川さんの顔が赤く染まっていく。
「と、飛雄……ごめ……」
恥ずかしそうに真っ赤になりながら、謝ろうとする彼の唇を自分の唇で塞いだ。
初めて自分からキスした
及川さんはこれでもかって言うぐらい顔を真っ赤にして、涙を溢した。
謝罪じゃなくてもっと他の、言葉が欲しい。
あなたにだけ求める言葉
藍色に包まれていた辺りが、徐々に眩しく満たされていく。
俺と及川さんの瞳から頬を伝って流れた涙が、キレイな朝日に照らされて輝く。
「飛雄……俺がお前を幸せにしてあげる。
ありがとう、好きだよ」
そう微笑んで、今度は及川さんが優しく甘いキスをくれた。
そうだよ 他の誰かじゃない。
俺を幸せに出来るのはあなたしかいないんだよ……
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