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第67話
「つーか、ちゃんと言ってくれればこんなことにはならなかったのに……
普段余計なことペラペラしゃべるくせに、なんで肝心なことは何も言わねーんだよあんた!」
「余計なことペラペラって、随分な言い様だねトビオちゃん……」
「一歩間違えてたら、本当に俺達別れてたかもしんねーんすよ!」
「うっ……ゴメンね飛雄。
あの時は頭に血が上っちゃって……ショックをうけたのが強すぎて、すごい混乱してたんだよ……
本当にゴメンね、反省してます」
眉を下げて項垂れる及川さんに、一つため息を吐いて横目で睨みながら歩く。
あの後、しばらくキレイな朝日を、二人寄り添って眺めてから朝食を取り、
あれやこれやとバタバタ準備してから二人一緒に家を出た。
そして、歩きながらのお説教ターイム!
「だいたい、勝手に勘違いして、確認もとらずに怒るとかあんたなんなんすか!
ちょっと笑ったぐらいで怒るなんて、どんだけ俺のこと信用してないんすか?」
「し、信用してない訳じゃないんだよ!
ただ、飛雄は女の子にチューされたの初めてだろーから、嬉しかったんじゃないかなぁ~って……」
「その言い方だと、及川さんは初カノにキスされた時、相当嬉しかったんすね?」
「そんなこと無いよ!!
俺はずっと飛雄のこと好きだったって言ったじゃん!
飛雄と初めてキスした時の方が嬉しかったに決まってる!!」
「でもやっぱり、初キスの方が思い出に深く刻まれると言うか……」
「いや、やっぱり好きな人と、初恋の人とのキスの方が、価値があるに決まってる!!」
「初恋の人とのキスって……及川さんの初恋って誰なんすか?」
俺の初恋は勿論及川さんだけど……
及川さんはやっぱり昔からモテただろーから、もう初キスは幼稚園とかそこらへんだったんじゃないだろーか?
初恋は、幼稚園の時に出会った可愛い女の子とか……?
なんて考えながら、チラリと及川さんを見ると、顔を赤くして、でも真っ直ぐこちらを見つめてきた。
「は、話の流れで分かるでしょ?
初恋は飛雄に決まってんじゃん……」
「え? ……嘘っすよね?」
「なんで嘘になるのさ!
ほんとーに飛雄だよ!」
「本当の本当の本当っすか?」
「本当だよ……確かに及川さんは昔からよくモテて、女の子が皆俺のこと好き好きって近寄ってきたけどさ」
自慢かよ?
「でも、俺は、好かれるより好きになりたいってゆーか……あんまりしつこく好き好き言われると、反対に冷めちゃうんだよね……
飛雄が初めてだよ、自分から好きになったの。
飛雄は俺のバレーしか見てないって悔しくて。
女の子は及川さん好き好きだったけど、飛雄は及川さんのバレー好き好きだったからスゲームカついてね。
いつもキラキラした目で見てきてさ……
そのキラキラ目をバレーしてる俺じゃなくて、俺自身そのものを見て欲しいって思ったんだよ」
耳まで赤くして話す及川さんに、こっちまで恥ずかしくなってきた。
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