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第69話

及川さんはやっぱりすごいモテるから、不安になる時は沢山ある。 あんたは俺の彼氏なんだから、安心させて 不安を取り除いて欲しいんだ。 だから、 もっと言葉を下さい…… 一回や二回じゃ足りないんだ。 「そう言う及川さんも、その……俺のこと大好きなんですよね?」 自分で言っといて、なんかやっぱり恥ずかしくなった。 俺を抱きしめて肩口に顔を埋めていた及川さんは、小さく笑ってまた抱く力を強めた。 「大好きだよ、死ぬほど……」 なんかすごい重く響いた声。 それでも好きな人の言葉だから、俺も死ぬほど嬉しくて。 でも、どうしようもなく恥ずかしくて…… 「も、もう早く行かないと、朝練遅刻しますよ……」 照れ臭くて俺は、及川さんから身体を離して歩き出す。 そんな俺の耳に、彼の堪えたような笑い声が届く。 「あれれ~~トビオちゃ~ん? 自分で聞いといて恥ずかしくなったのぉ?」 「う、うるさいっすよ! 朝から変なこと言ってないで、早く行きましょう。 本当に遅刻しますよ!」 「良いよ。 今日はもう最初から遅刻するつもりだから」 サラリと言われた言葉に、目を見開いてしまう。 なんで遅刻するつもりなんだよ? あんた、キャプテンなんだから一番遅刻しちゃあダメだろ? 「は? 何言ってんすか?」 「だって、今日は飛雄を烏野まで送りたいからさ。 バレーも大切だけど、でも一番は飛雄だから。 学校違ってあんまり一緒に居られないからさ、こういう日ぐらい長く一緒にいたいんだよ」 何言ってんだよ! ダメだろそんなこと 俺のせいで遅刻するとか、そんなの絶対嫌だ。 でも、普通に説得したんじゃあこの人は言うこと聞いてくれないと思うから、 だから俺は、心を鬼にする。 「及川さん……烏野までついてきたら、もう俺及川さんとHしませんから」 「えぇえっっっ!!!?!」 Hと言う単語を言うことに、語尾が小さくなったけど、代わりに及川さんが大きな声で叫んだ。 「か、彼氏として、恋人をちゃんと送り届けるのは常識でしょ!? なのになんでそれをしたら、もうHしないことになるのさ!!」 「あんた、外でそんなことデケェ声で言わないで下さい! だって、俺とHした日は、俺を学校まで送り届けるのが常識とか言うなら、もうHしません!」 「えぇぇーーーー酷いよ飛雄!! そりゃ、飛雄と付き合えるだけで幸せだからさ、そんなにがっついてHしようなんて思わないけど、 それでも好きだからやっぱりHしたいじゃん! 愛を確かめ合いたいじゃん! それなのに、酷いよ飛雄!!」

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