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第76話

及川side 飛雄に手を出したら、男だろうが女だろうが許さない…… 本気で初めて好きになった人。 飛雄も離れない、傍にいるって 俺のことが本気で好きって思ってくれるならもう、絶対離さない。 俺だけのものだよ…… 「今日は朝からずっと、集中力がないっつーか、明らかになんか悩んでるって顔に書いてあるぞお前。 昨日影山と何かあったのか?」 相変わらず岩ちゃんは鋭いな…… 昼休み、たまには外で食べようかって話になって、俺と岩ちゃんは屋上へと向かっている。 イライラしながら猛烈ダッシュしたおかげで、朝練は普通に間に合った。 でもずっと飛雄とチビちゃんのことが気になってソワソワしてたのか、今日はよく岩ちゃんにボールをぶつけられるとこが多かったな。 メンタル弱すぎ…… 「昨日せっかく飛雄と初デートだったのに、烏野の10番と11番が邪魔してきてね……」 「あーー確かその二人、影山のこと好きなんだって言ってたよな。 それならまあ、お前らがデートするって知ったら邪魔するわな……」 「……しかも、二人だけじゃないんだよ…… 昨日、梓ちゃんと久しぶりに話してね、 梓ちゃんも飛雄がタイプとか言い出したんだよ」 「!! 梓って……新藤か?」 梓と言う名前に、岩ちゃんはあからさまにビックリしたように目を見開いた。 梓ちゃんは元カノだし、岩ちゃんと何回も話したことある。 「うん。久しぶりに話したんだ新藤梓と……」 「ん~~なになにぃ? 私のこと呼んだぁ~~?」 「ゲっ! 梓ちゃん?!」 明るいテンション高めな声が聞こえて前を見ると、梓ちゃんが前方から元気よく手をふりながら近寄ってきた。 「なぁにぃ? 私のウワサしてたでしょ? ウワサなんてしてないで、私を呼んで堂々と話そーよ!」 「おう、新藤久しぶりだな~」 「ほんとにねぇ~~同じ学校なのに徹と別れた途端、全然話さなくなったもんね。 教室も離れてるしね~」 「今日はどうしたんだ?」 「うん。ちょっとね」 ニコヤカに話す二人を、イライラしながら見つめる。 岩ちゃんは女子には優しい。 てゆーか、俺以外の人には皆優しいかな。 でも、今までの元カノ達の中から、一番よく梓ちゃんとは話している。 気が合うんだろし、俺と梓ちゃんが付き合ってた頃は、よく三人で話したりして仲良くしてたからなぁ。 でも今となっては、ライバルと親友が話す姿を見るのは、あんまり気持ち良いもんじゃないな…… 「実はね、偵察ってゆーの? ライバルである徹とちょっと話しといた方が良いかなと思ってね!」 「梓ちゃん偵察って、敵をこっそり探ることを言うんだよ? 梓ちゃん堂々と来ちゃったね……」 「私、こそこそするの嫌いなの。 まあ、時と場合によってはこそこそするけどねぇ~」 なんて楽しそうに笑う梓ちゃんを、ゲッソリした気持ちで見る。 そんな俺を置いといて、岩ちゃんが物凄くクッキリと眉間にシワを寄せて口を開いた。 「新藤……ライバルって、お前も影山が好きってことか?」 「影山? とびお影山って苗字なんだ! そうそう! とびお結構カッコいい顔してるじゃない? かなりタイプだなぁ~と思ってね!」 「なんだよそれ……」 あからさまに苛立ちを含んだ顔をする岩ちゃんに、俺も一緒に余計イライラした。 「もぉ~~、そんな顔しないで、岩ちゃんも私の恋応援してほしいな」 「飛雄は俺の恋人だよ! 応援するわけないでしょ! てゆーか梓ちゃん、なんでまだ岩ちゃんって呼んでんの? 飛雄のことも名前呼びじゃなくて、影山って呼びなよね!」 「えぇーーーー! 良いじゃん、岩ちゃんととびおで! 徹もそう呼んでるから、私もそう呼びたいの! そんなことより徹、今日は久しぶりに一緒にご飯食べよーよ!」 笑顔の誘いに俺は、岩ちゃんと一緒に眉間に思いっきりシワを寄せた。

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