81 / 338

第80話

及川さんは、メッチャクチャ顔を真っ赤に染めて、俺をガン見して固まっている。 しかも、なんか少し震えてる? そんな及川さんの反応を見たら、自分がどれだけ恥ずかしいことをしてしまったのか、嫌でも思い知らされた。 こっちも顔が熱くなってくる。 「いや、あ、あの、及川さんこれはですね…… えーと、違うんっすよ!」 「なぁ~~にが違うんですかぁ王様ぁ? もしかして今のは、貴族的な遊びですか? 一般庶民の僕には分からないお遊びですかぁ?」 「うるせぇ月島ボゲェ!!」 ニヤニヤと口を手で覆いながら、俺の顔を覗き込んでくる月島に殴る真似をして威嚇する。 それに態とらしく避ける真似をする月島に、余計イライラした。 そんな俺達を見ていた日向が、突然あっ!と大きな声を出した。 「お、おい……もしかして影山お前、メールで俺が言った好きな奴のフェロモンを確かめるために、大王様の匂いを嗅いだのか……?」 「フェ、フェロモン……俺のフェロモン?」 「あーー、いやあの、及川さん……」 眉間にシワを寄せた日向の言葉に、ずっと固まって動かなかった及川さんが、更に顔を赤くする。 日向の奴、及川さんの前でそんな話するなよボゲェ!! 余計に恥ずかしくなるだろーが! 「二人とも何フェロモンとか変な話してんの…… てゆーか王様ぁ~、大王様のフェロモンどうだったの? なんなら僕の匂いも嗅いでみる? 大王様のフェロモンより良いかもしれないよ」 まだニヤニヤ意地悪く笑って、月島が俺に近付いてきた。 「ホラ~~、僕の匂いも嗅いでみてよ王様~」 「なっ! こっちくんなボゲェ! 誰がお前の匂いなんか嗅ぐかボゲェ!!」 「なんでさ、僕の方が大王様より良い匂いかもよ? 王様の鼻を満足させられるフェロモンを出してるかもよ?」 もしそうだったとしても及川さんの匂い以外を、良い匂いと思いたくない。 及川さんの匂いだけを嗅いでいたい。 って、なんかやっぱり変態っぽいな俺…… ホラホラーと近付いてくる月島から逃げまくっていると、日向が俺の腕を乱暴に掴んで歩き出した。 「うおっ! いってーな日向!」 「ちょっと日向。王様連れていかないでよ。まだ話終わってないんですけど~」 「なんで、なんで、あのメールの話から、大王様の匂いを嗅ぐっていう発想が出てくるんだよ! なんでだよ! おかしいだろ!」 怒りのこもった日向の声。 なんだよコイツ? まだ怒ってんのか? 「いやだってお前、好きな奴の匂いとかフェロモンとか言うから、 及川さんの匂いどんなのかなって、気になってきたんだよ。 お前があんなこと言わなかったら、こんなこと考えなかったのに……」 「なんだよそれ! 俺の話しは無視するくせに……」 「無視したんじゃねーよ。携帯没収されたらマズイだろ? つーか、いつまで怒ってんだよお前……」 いつまでも怒ったような口調で喋る日向に、小さくため息を吐いた。 「だって俺は、大切な話をしてたのに……」 「ちょっと二人とも!! 及川さんをほったらかしにして、何こそこそ話してんの? 待ちなよ飛雄!!」 そこで追い掛けてきた及川さんが、俺達の肩を掴んで頬を膨らませている。 その頬はまだ赤いままだ。 そんな彼を見たら、少し鎮まりかけていた顔の熱が、また沸騰しそうになった。 「いや、あの、及川さん、俺……」 「飛雄、詳しくは俺の家で話そう。 おいで!」 熱い顔、しどろもどろになった俺に及川さんはそう言い放って、手を差し伸べた。 戸惑いながらその手を取ろうとした俺に、ますます日向が怒りのこもった声を上げる。 「昨日セックスしたばっかなのに、また大王様のとこに行ってヤるつもりなのか!?」 「な、なな、何言ってんだ日向ボゲェ!!」 「うっわーー……やっぱり二人ヤってんだ。 お盛んですねーー……」 月島の嫌な顔に、及川さんはニヤニヤと笑いだす。 「そりゃあ俺達若い、男子高校生ですから~~」 「及川さんも何言ってんすか!」 「ダメだ!! 影山真っ直ぐ家帰れ!!!!」 日向の怒りの強声が響き、及川さんがニヤニヤと俺を見て笑っていた。

ともだちにシェアしよう!