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第80話
及川さんは、メッチャクチャ顔を真っ赤に染めて、俺をガン見して固まっている。
しかも、なんか少し震えてる?
そんな及川さんの反応を見たら、自分がどれだけ恥ずかしいことをしてしまったのか、嫌でも思い知らされた。
こっちも顔が熱くなってくる。
「いや、あ、あの、及川さんこれはですね……
えーと、違うんっすよ!」
「なぁ~~にが違うんですかぁ王様ぁ?
もしかして今のは、貴族的な遊びですか?
一般庶民の僕には分からないお遊びですかぁ?」
「うるせぇ月島ボゲェ!!」
ニヤニヤと口を手で覆いながら、俺の顔を覗き込んでくる月島に殴る真似をして威嚇する。
それに態とらしく避ける真似をする月島に、余計イライラした。
そんな俺達を見ていた日向が、突然あっ!と大きな声を出した。
「お、おい……もしかして影山お前、メールで俺が言った好きな奴のフェロモンを確かめるために、大王様の匂いを嗅いだのか……?」
「フェ、フェロモン……俺のフェロモン?」
「あーー、いやあの、及川さん……」
眉間にシワを寄せた日向の言葉に、ずっと固まって動かなかった及川さんが、更に顔を赤くする。
日向の奴、及川さんの前でそんな話するなよボゲェ!!
余計に恥ずかしくなるだろーが!
「二人とも何フェロモンとか変な話してんの……
てゆーか王様ぁ~、大王様のフェロモンどうだったの?
なんなら僕の匂いも嗅いでみる?
大王様のフェロモンより良いかもしれないよ」
まだニヤニヤ意地悪く笑って、月島が俺に近付いてきた。
「ホラ~~、僕の匂いも嗅いでみてよ王様~」
「なっ! こっちくんなボゲェ!
誰がお前の匂いなんか嗅ぐかボゲェ!!」
「なんでさ、僕の方が大王様より良い匂いかもよ?
王様の鼻を満足させられるフェロモンを出してるかもよ?」
もしそうだったとしても及川さんの匂い以外を、良い匂いと思いたくない。
及川さんの匂いだけを嗅いでいたい。
って、なんかやっぱり変態っぽいな俺……
ホラホラーと近付いてくる月島から逃げまくっていると、日向が俺の腕を乱暴に掴んで歩き出した。
「うおっ! いってーな日向!」
「ちょっと日向。王様連れていかないでよ。まだ話終わってないんですけど~」
「なんで、なんで、あのメールの話から、大王様の匂いを嗅ぐっていう発想が出てくるんだよ!
なんでだよ! おかしいだろ!」
怒りのこもった日向の声。
なんだよコイツ? まだ怒ってんのか?
「いやだってお前、好きな奴の匂いとかフェロモンとか言うから、
及川さんの匂いどんなのかなって、気になってきたんだよ。
お前があんなこと言わなかったら、こんなこと考えなかったのに……」
「なんだよそれ! 俺の話しは無視するくせに……」
「無視したんじゃねーよ。携帯没収されたらマズイだろ?
つーか、いつまで怒ってんだよお前……」
いつまでも怒ったような口調で喋る日向に、小さくため息を吐いた。
「だって俺は、大切な話をしてたのに……」
「ちょっと二人とも!!
及川さんをほったらかしにして、何こそこそ話してんの?
待ちなよ飛雄!!」
そこで追い掛けてきた及川さんが、俺達の肩を掴んで頬を膨らませている。
その頬はまだ赤いままだ。
そんな彼を見たら、少し鎮まりかけていた顔の熱が、また沸騰しそうになった。
「いや、あの、及川さん、俺……」
「飛雄、詳しくは俺の家で話そう。
おいで!」
熱い顔、しどろもどろになった俺に及川さんはそう言い放って、手を差し伸べた。
戸惑いながらその手を取ろうとした俺に、ますます日向が怒りのこもった声を上げる。
「昨日セックスしたばっかなのに、また大王様のとこに行ってヤるつもりなのか!?」
「な、なな、何言ってんだ日向ボゲェ!!」
「うっわーー……やっぱり二人ヤってんだ。
お盛んですねーー……」
月島の嫌な顔に、及川さんはニヤニヤと笑いだす。
「そりゃあ俺達若い、男子高校生ですから~~」
「及川さんも何言ってんすか!」
「ダメだ!! 影山真っ直ぐ家帰れ!!!!」
日向の怒りの強声が響き、及川さんがニヤニヤと俺を見て笑っていた。
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