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第82話
及川さんが出てくるまで、寝室で待ってる……
ずっと考えてた好きな人の匂い。
さっきは及川さんが傍にいて緊張してたから、匂いとか何も分からなかったけど、今は及川さん風呂だから……
…………いつも寝ている布団なら、及川さんの匂いも
よくついている、よな?
今日の朝もこの布団で目覚めたけど、色々あって匂いなんて分からなかった。
好きな人の匂いを意識して、彼がいない今なら……
どんな匂いか、確かめられる!
俺はゴクッと唾を飲み込んで、ゆっくりベットへと近付いた。
ベットに座り、そっと掛け布団を持ち上げた。
なんか、彼氏がいないうちにこっそり布団の匂い嗅ぐなんて……やっぱり変態がすることかな?
でも、及川さんの匂いが、俺の好きな匂いか気になるし。
好きな匂いであってほしい……
俺は意を決して、持ち上げた布団を鼻に近付けようとしたその時!!
ピロン♪
タイミング悪く俺の携帯が、メールを受信した。
鼻に近付けようとした布団を一回もとに戻す。
メールを見るだけだ、別に逃げた訳じゃない。
ポケットに入れていた携帯を取りだし、相手を確認する。
なんだ、日向かよ。何のようだ?
下らない話だったら、明日ぶっ飛ばす。
《お前今何処にいる?》
なんだこの質問?
今何処にいるって、及川さんのとこにいるけど?
《及川さんのとこ》
深く考えずにこれだけ打って送信する。
した後で気付いた、日向が及川さんの家に行かず真っ直ぐ帰れと言ってたことに。
やべぇ……正直に答えちまった。
もしかしたら明日、月島とかに
『昨日影山の奴、大王様とヤったんだって!』
なんて言い触らされてしまうかもしれない。
やべぇな……なんて焦っていると、日向から返信が来た。
《やっぱりそーだろーと思った!
大王様の匂い嗅いだり、昨日ヤったばっかなのに今日もヤったりして……
この変態! スケベ! 影山のヤリチン!!》
日向があんな話をしなければ、及川さんの匂いを嗅ごうなんて思わなかったのに、何がスケベだ!
誰がヤリチンだボゲェ!
「飛雄~~お待たせ~」
イライラしながらメールを打っていると、及川さんが風呂から出たらしく、テンション高めの声で寝室に入ってきた。
「……ハイ」
早くボゲ日向に文句のメールを返したくて、携帯画面に視線を落としたまま返事をする。
《お前があんなメールするから、及川さんの匂いが気になり出したんだ!
全部お前のせいだ!
それに、及川さんと俺は付き合ってんだから、いつヤろうと勝手だろーが!》
「飛雄? 何してんの?」
「メールです!」
「…………あ、そう……」
メールを打っていると、及川さんが肩を叩いて質問をしてきた。
それに半ば怒りぎみに返事をした。
俺は今、ヤリチンとか言われて腹が立ってるんだ!
日向のくせに、ヤリチンとかスケベとか言いやがって!
側でドライヤーの音がしてきたが気にせずに、心の中で文句を言って送信ボタンを押す。
すると、またすぐに返信が来た。
《なんで俺のあの話で、大王様の匂いを嗅ぐことになるんだよ!
信じらんねー!!
どうせ、変態影山くんは、大王様の元カノの匂いも良い匂いとか思ってたんだろ?》
《なんでここで新藤さんが出てくるんだ!》
《お前が変態でスケベでヤリチンだから!!》
こいつ、またヤリチンって言いやがった!!
腹立つ!
言い合いは続き、ピロンピロンとメール受信音が鳴り続ける。
ピロン♪
と、またメールが来たのでイライラしながらまたメールを打っていると、
突然及川さんに腕を掴まれ、携帯を払い除けられた。
携帯がベットの下に落とされ、床を滑っていく。
その音を聴きながら、目の前の不機嫌顔の及川さんを見つめる。
「飛雄……俺の方見てよ」
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