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・第85話・

強く、抱いて…… 心の中で呟いて、そっと目を閉じる。 光を閉ざしても、今の自分に不安なんて何処にもない。 感じるあなたの体温と、好きだって気持ちがあれば大丈夫。 受け入れる自信は出来てる。 及川さんは、荒々しい手付きで俺の服を脱がしていく。 忙しなく動く手の感触に、これから始まる行為への期待と緊張で、身体が震えた。 衣擦れの音に集中していた俺の唇に、さっきの触れただけのとは違う強引で、熱い口付けが与えられる。 呼吸全てを奪い去るような、激しいキスだった。 きつく痛く舌を絡め取られ、熱く視界が滲む。 「ん…ふぅ……んんふ、ふぁ……んんぅ」 苦しくて、何度も吸い上げられる度、胸の奥が鷲掴みにされるような感覚。 それは確かに苦しいけど、泣けて暖かく、もっとしてほしいと求めてしまうほどのものだった。 もっとほしい……口付けだけじゃなく、下の方ももっと満たしてほしい。 その気持ちが届いたのか、及川さんは舌を絡めたまま、熱が溜まり始めたところへと容赦なく手を伸ばしてきた。 いつの間にか、生まれた時と同じ姿にさせられていた俺の熱は、簡単に掴み取られた。 昨日と同じ、強く痛く握り込まれ上下にギチギチとしごかれると、思わず上擦った声が上がってしまう。 「うぁっ! ン、あぁ……」 及川さんは怒っていて、それで俺を激しく抱こうとしている。 それは昨日と同じだけど、でも俺の中での気持ちは違う。 なんであなたが怒っているのか、ちゃんと理由を知ったから。 昨日はあなたの気持ちが分からなくて、怖いって、悲しみを感じていた。 でも今日は泣いてしまっても、意味の違う涙だから。 あなたは俺を好きすぎている…… 愛しすぎているから嫉妬して、自分を見てほしいって思うんだろ? 不安だから、こうやって激しく抱こうとするんだろ? そんな心配、いらないのに……こんなに愛しているのに…… それでも、俺があなたを不安がらせて、悩ませてしまった。 だから、そんな嫉妬や不安なんて悲しい気持ちは、俺が全て消し去ってあげる。 あなたは心配しないで思いっきり俺を抱けば良いんだ。 及川さんは俺の欲望を痛いほど刺激しながら、後ろにも手を伸ばして指を突き立ててくる。 「ん、はぁうぅ…んぁ……ぁ」 痛みに顔を歪ませてしまっても、心は穏やかで。 気持ちが良いところに及川さんの指が当たるように、自分から腰を動かす余裕さえある。 「ふ、ハァ……お、いかわさ……もっと……掻きま、わしてっ……あうぅ…はあぁ!」 「飛雄……」 良いとこに当たるように当たるように動いて、あるところに指が触れて、 全身に電気が流れて痺れるような感覚に襲われる。 もっと、色んなとこに刺激がほしい…… 昂りをしごいていた手を掴んで、胸の方へと導く。 及川さんは、固くたっている尖りを指で痛いほど摘まんだり、捏ねたりしてくれる。 「ン、ン、あぁ、う……」 胸に強い刺激を与えながら、後ろも気持ち良いところを何度も突いてくれて、気持ち良すぎて視界が滲んでくる。 「んぅ、はぁぁ、おい、かわ、さ、ん……ハゥ、あぁ……」 涙を流しながら、快感を与えてくれる愛しい手をギュッと握った。 すると及川さんは、ズルリと蕾から指を引き抜いた。 もしかして、もう入れてくれるのか? ほしい…… 早く、早く気持ち良く、貫いてほしい。 「うぅ、んはぁ……おい、かわさ……ん……」 早く来て! そう思うのに、なかなか及川さんは俺の中に入ってきてはくれない。 どうしたのかと首を傾げながら彼の顔を見ると、何故か悲しそうに眉を下げて、俺を見つめていた。

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