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第87話
あなたのことが大好きだから、
酷く痛くしても良いって
思いっきり強く抱いてほしいって
言ったけど……
及川さんはどこまでも優しくて、沢山好きだ好きだって言ってくれて、
キスも愛撫もその先も
すごく優しく気持ち良くしてくれた……
「……ん…及川さん……」
翌朝、意識がフッと覚醒して、辺りを見渡す。
まだ薄暗くて、明け方かその辺だろうと解釈した。
そう言えば昨日は、目が覚めた時及川さんが居なくて慌てて泣いたっけ……
思い出したくなかったのに思い出してしまって、恥ずかしいやらでもちょっと笑えてくるやらで、不思議な気分になった。
無理やりされてもきっと、及川さんとのことだから、どんなことでも良い思い出になるんだろーな。
なんて思わずまた笑いながら隣を見ると、今日はちゃんと愛しい人、
及川さんは俺の直ぐ傍で可愛い寝息をたてて眠っていた。
イケメンの寝顔はちょっと間抜け面で、でも可愛くて。
いつもの自信満々そうな整った、格好いい顔は何処へ行ったのやら。
可愛い寝息を聞いて、間抜け面を見ていたら、どんどん愛しさが募ってゆく。
そっと手を伸ばして、ふあふあな髪をゆっくり撫でてみる。
「…んん……」
及川さんは小さく声を漏らして身動いだ。
その可愛らしい姿が何とも言えない気持ちにさせて、胸がキューっとなった。
もっと可愛い姿が見たい、柔らかな髪に触れていたくて、俺は彼の頭を撫で続けた。
「ん…んん、トビオちゃ……ん……」
あ、触りすぎて起こした? それともあの寝言か?
ドキドキしながら、それでも撫で続ける。
「んんぅ、トビオちゃん……好き……フフフ
好き…………」
寝言……
やっぱり恥ずかしい、でも嬉しくて微笑ましかった。
そっと彼に顔を寄せて、額にキスを落とす。
あ……
その時、彼の髪の毛から香ってきた匂いに、鼓動が速くなったのが分かった。
汗が混ざった、
でも甘くて落ち着く匂い。
もっとずっと嗅いでいたい……
俺、この匂い……及川さんの匂い
……好きだ……
好きだこの匂い……
良かった……及川さんの匂いが俺の好きな匂いで。
そう思いながらまた彼の頭を撫でて、髪の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
あーーこの匂いスゲー好き……
思わず笑いながらずっと匂いを嗅いでいると、いつの間にか起きていた及川さんに突然腕を引っ張られ、バランスを崩して及川さんの胸に勢い良く顔をうずめる形にさせられた。
「どお飛雄、及川さんの匂い、良い匂い?」
及川さんの胸に顔をうずめたままギュッと抱きしめられ身動きがとれなくて、否応なしに彼の匂いが香ってきて、俺をドキドキさせる。
やっぱり匂いを嗅いでたことバレてしまったか……
「すごい夢中になって、笑いながら俺の頭の匂い嗅いでたみたいだけど。
そんなに俺良い匂い?」
確かに俺は、彼の言う通り夢中になって匂いを嗅いでた。
本当に大好きな、匂いだった。
彼の匂いを意識しただけで、ほら今も顔が熱くなっていく。
これはもう、素直に言うしかない。
「お、及川さんの匂い……すごい好き、です……」
恥ずかしすぎて、ますます顔が熱くなる。
その事を知られたくなくて俺は、照れ隠しで及川さんの胸を叩いた。
「あ……も、もお、早く離してください!!」
「イタッ! 痛いって飛雄~
そんな照れちゃって本当に可愛いね。
俺さ、飛雄にそう言ってもらえて、すごい嬉しかったのに……」
及川さんの腕の中から抜け出して、逃げるようにベットから下りると、彼は嬉しそうに笑いながら俺を追い掛けてきて、
後ろから強く抱きしめてきた。
「もう一度聞かせて……俺の匂い好き?」
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