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第94話
及川side
女神様(岩ちゃん)の怒鳴り声が響いた。
助かった!
「相変わらずお前の周りは騒がしーなクソ川!」
「おおぉ! 俺の女神様よぉ~!」
「誰が女神だボゲェ! そう言うなら神様って言えよ!」
「ププププゥーーーー! 岩ちゃんが神様だってぇ~~プププププーーーー!!」
「何が言いてぇーーんだボゲェ……」
「キャーーーーーーーーッ!!」
ガシィィッと、岩ちゃんに頭を鷲掴みにされ悲鳴をあげていると、女の子達が頬を膨らませた。
「ちょっと岩泉~、邪魔しないでよ!」
「岩泉くんと遊んでないで、私達と遊ぼーよー!」
遊ぼうって言われるのは嬉しいけど、やっぱり女の子達と遊ぶより岩ちゃんとバカやったり、飛雄とラブラブする方が楽しいな……
なんて考えていると岩ちゃんが眉間にくっきりとシワを寄せて、長いため息を吐いた。
「こいつ今から恋人に会いに行くから、お前らの相手してられないんだとさ」
まだシワを寄せたまま、でもどことなしか真剣そうな目でハッキリ言う岩ちゃん。
その言葉に女の子達は、しょんぼりしたような顔をする子もいれば、岩ちゃんと同じように眉間にシワを寄せる子もいた。
「及川先輩……やっぱり新しい彼女出来たって噂本当だったんだ……」
「ショックぅ~~……」
「でも前までは、彼女いても遊んでくれたじゃん!」
「今日がダメなら明日は遊んでよ。いーでしょ?」
そうだ……前までなら、彼女いても他の子と遊んでた。
飛雄がずっと忘れられなくて、他の子は飛雄を忘れるために無理に付き合ってたから、好きじゃなかったから……
それで俺、沢山の子を傷付けちゃってたんだ。
ずっと女の子達とふざけ続けてたから、あの初デートの時も飛雄を傷付けて……
だからもう、飛雄も誰も傷付けないために、ちゃんと言わなきゃ!
「ゴメンね……俺、もう遊べない。
あいつのことも、皆のことも泣かせたくないから。
だから、あいつ……飛雄とは本気で真っ直ぐな気持ちで付き合いたいんだ。
本当に大切だから……」
真っ直ぐな気持ちで、女の子達と向き合う。
名前を出したのも、俺がそれだけ飛雄に本気なんだって分かってもらうためだ。
本当に……大切で、大好きで、本気だから。
女の子達は悲しそうで、でも笑ってくれた。
「そっか、そのとびおさんのこと大切にしてるんだね……」
「なんか泣けてきちゃった」
「でも、私達とはずっと友達だよね?」
「もちろん! これで話さなくなるとか寂しーよ。
放課後は無理だけど、またいっぱい喋ろうね!」
俺の言葉に女の子達はホッとした顔をして、笑顔で手を振りながら帰っていった。
良かった誰も傷付けず、本気なんだって分かってもらえて。
安堵のため息を小さく吐いていると、岩ちゃんが少し乱暴に髪の毛を掻き回してきた。
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