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第95話
及川side
カッコ良いって思ってもらいたくて
飛雄に会う前だからセットし直した髪を、岩ちゃんが乱していく。
怒ろうと思ったけど、でも岩ちゃんがあまりにも切なそうに、でもどことなしか優しく笑ってたから……
その顔がなんか珍しくて、怒るに怒れなくなった。
「いつもふざけてっけど、少しはマシになったかクソ川!」
「ふざけてないし! 及川さんはいつも真面目ですぅ~」
「影山がいるのに、女に菓子を食わせてもらってた奴がよく言うべ!
別に女が友達でも構わねーけどよ、恋人がいるのに他の奴に食いもんを食わせてもらうのはどーかと思うべ。
せめて受け取って食えよ」
「うん……それはダメなことだったんだって痛いほど分かったよ……」
飛雄がチビちゃんにハイあ~~んをされそうになったのを見て……友達に食べさせてもらうことがどれだけ恋人を傷付けてしまう行動かを思い知った。
そして、俺が女の子にそれをやってもらってるって知った時の、飛雄のあんな顔はもう見たくない。
もう絶対、ふざけてあんなことしない。
「お前が過去に色々あったのは知ってっけど、それでも付き合ってる奴がいるのに他の女とどっか行くのは最低だぞ。
さっきもあのまま、女達とどっか行くんじゃないかってヒヤヒヤしたべ!」
「飛雄がいるのにそんなこと……いや、その、反省してます……」
行くつもりはもちろんなかったけど、俺の日頃の行いを見てる岩ちゃんなら、そう思わずにはいられないだろう。
俯いて落ち込んでいると、岩ちゃんがため息を吐いて、また俺の髪を掻き回した。
「もう、恋人を悲しませるようなことすんなよ。
お前のちょっとしたふざけた行動で、すごい傷付いてた女もいたんだからな……」
岩ちゃんの言葉が俺の心に重くのしかかった。
そうだよね……本当に沢山の女の子達を傷付けてきたから。本当に反省してる。
あれ? でも、なんかその口振りだと、岩ちゃんは一人の女の子のことを言ってるみたいに聞こえるな……
「岩ちゃんそれって、誰のこと言って……」
「つーかお前、影山を待たせてるんじゃないのか?
また悲しませるなよ! 早く行け!」
岩ちゃんが怒ったような面持ちで、背中を押してきた。
そうだ、早く飛雄に会いたい!
絶対に俺はもう、飛雄を傷付けないよ!
「い、岩ちゃんありがとう! また明日ね!!」
岩ちゃんの言うすごい傷付いてた女の子のことも気になるけど、今は早く飛雄に会いたいんだ!
俺は走りながら岩ちゃんに手を振って、飛雄のもとへ急いだ。
「あれ? トビオちゃん?」
早く飛雄に会いたいから猛烈ダッシュして、烏野に到着した。
でも、いつもは校門前で顔を赤くして待っててくれているのに、今日はその可愛い姿がどこにも見当たらない。
もちろん居なくても良いのに一緒にいる、チビちゃんとメガネくんも居ない。
俺が遅かったからもしかして、もう帰ったとか?
もしくは、チビちゃん達に連れ去られた?
……いやいや、さすがにそれはないよねぇ~~
あの二人は飛雄が本気で嫌がることはしないと思うし。まさか飛雄ともあろうものが、俺が来るの分かってるのに帰るとかそんなの絶対有り得ないよね~
きっとあいつバレーバカだから、まだ残って自主連してんだろーな!
この及川さんを待たせるなんてトビオちゃんめ~
仕方ないなぁ、もう少し待っててやるか。
そんで、後でお仕置きだからね、トビオちゃん♪
なんて考えてること岩ちゃんにバレたら、殴られそーだな~
「フフフッ」
なんてニヤニヤしながら待ってたけど、なかなか飛雄は姿を見せない。
遅いなぁ~本当にお仕置きしてやる……なんて思っていたその時、数人の女の子達がこちらに近付いてきた。
「あっ! もしかして、青城の及川くんですか?」
「え? あ、そうだけど……?」
「キャーーーーやっぱりぃ~~!」
「本物の及川くんだぁ~カッコい~♡」
「私、試合いつも応援しに行ってます!
すごいカッコ良くて綺麗で、及川くんのバレー大好きです!
きゃッ! 言っちゃったー♡」
「あ、ずるーーい! 私も、及川くんいつも応援してます!!」
「あ、あはは……ありがとう」
ヤバイな……また女の子達に囲まれちゃった。
これだから、イケメンは大変だよねぇ~~
「どうして烏野に?」
「人を待ってるんだ……」
「えぇーーーー? もしかして彼女とか?」
「フフ、そーかもね」
「キャーヤダーーーーウソーー!」
「ハハハ……」
なんて笑って曖昧に返事をしてから、飛雄にメールを打つ。
その間も女の子達は、キャーキャー騒いでいる。
及川さん大変なんだよ!
俺のこと愛してるなら、早く出てきてよ飛雄ーーーー!!
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