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第103話

「トビオちゃんなんてもう嫌い!」 えっ!! なんでですか! やっぱり女の方が良いんですか? 「そりゃ、女の子の方が良い匂いするし、可愛いしね!」 そ、そんなぁ! 確かに俺は汗臭いし可愛くねーけど、頑張って良い匂いになって可愛くなるから! だから及川さん……! 「フフ……なーんてね! ウ・ソだよっ♪ 好きだよトビオちゃん」 及川さんは満面の笑みを浮かべて、俺の額に甘い甘いキスをしてくれた。 あぁ……及川さん……及川さん……………… ──────────………… 嬉しくて笑いながらゆっくりと目を開けると、そこには及川さんも、他の人も居らず、 何故か日向と二人っきりで、しかも額にキスをされていた。 「なっ! 何やってんだよ!!」 慌てて日向を突き飛ばして、勢い良く立ち上がった。 その時強い目眩いに襲われて、転けそうになった。 「……あ…」 「影山 危ない!!」 倒れる寸前で日向が、手を伸ばして抱き留めてくれた。 「日向……サンキュ……」 転けそうになったのは日向のせいだけど、でも助けてくれたから礼は言っておく。 それよりクラクラして頭が痛い…… 痛む頭に手を当てながら離れようとしたが、日向がギュッと力を込めて抱きしめてきた。 「なんだよ……離せよ……」 日向の身体を押すが、上手く力が入らない。 「ゴメン……離したくない」 「日向、嫌…だ離せよ」 それでも日向は離してくれず、もっと強い力で俺の身体を抱きしめた。 強く、それでも宝物を守るかのように優しく抱きしめられたら、ドクンドクンと激しく胸が高鳴って苦しかった。 及川さん以外の人に抱きしめられるなんて、そんなのあり得ないって思っているのに、 相手が日向だから本気で拒めない。 拒んで傷付けて……そしたら日向はきっと、悲しそうな顔して遠くに行ってしまうかもしれない…… それが怖くて、本気で拒めないんだ 「日向、頼むから離してくれよ……」 「ゴメン、影山……俺だってお前を困らせたくない。 でもお前に触れたら、もっと触っていたい、離したくなくて……止まらねぇ」 掠れた声でそう囁いた日向が、そっと俺の頬にキスをした。 それにやっぱり上手く抵抗出来なくて。 「やめ、止めろよ……ひ、なた……」 「ごめ……とまんねぇ……」 頬、額や、目尻、耳に首筋……色んなとこにキスを落としてくる。 柔らかく、熱い感触 心臓がうるさい 苦しくて、及川さん以外にこんなことされたくなくて、でも抵抗もまともに出来なくて 日向の熱い吐息が耳に届く度、苦しくて苦しくて、心臓が壊れそうだった。 「ひ…な、た……やめ……」 「影山……ゴメン、好き……」 熱っぽい甘い囁き……キス…… 日向が本気で俺のこと好きなんだって、思い知らされる。 でも俺は、その想いにこたえることが出来ない…… 日向の本気が分かれば分かるほど苦しくなって、唇の感触が熱すぎて、頭がもっとクラクラする。 「日向……俺…もう……ダメ」 「影山……体、熱い……」 そう呟いてまた強く抱きしめてくる日向。 そんなに強く抱きしめられたら俺……苦しくて、熱くて、もう限界…… 「え……? 影山?」 もう上手く力が入らなくて、頭痛くて、我慢の限界だった…… 「か、影山! 影山ぁ!!」 近くにいたはずなのに、遠くの方で日向の強声が響いた

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