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第106話
突然誰かの怒鳴り声が聞こえて、俺はビクッとしながら目を開けた。
声のする方へと目線を向けると……
そこには及川さんと日向の姿があった。
え? 二人でいったい何してんだ?
ここ俺の部屋だよな? いつの間に帰った?
なんで俺の部屋で、及川さんと日向が睨みあってんだ?
ああそうか、俺はまた夢を見ているんだ。
さっきの及川さんがキスしてくれたのも目開けたら日向いたし、あれも夢だったんだ。
そして今も夢を見ている……そう絶対これは夢だ!
あ~あ、さっきまで可愛い熊に抱っこされたり、頭を優しく撫でられてる夢だったのに……突然こんな夢に変わるなんてな……
夢なら早く覚めてほしい
目の前の二人をジーっと見つめてみたけど、まったく気付いていない様子だった。
及川さんは真剣そうな目で日向を睨んでいたが、フッと瞳を柔らかくした。
「チビちゃんは誰かに告白されたことある?」
「……無いけど、でもされたとしても俺は本気で影山が好きだから、大王様みたいにヘラヘラしない。
絶対余所見せず、影山だけを見てる!」
日向の強い言葉にドキッと胸が震えた。
影山だけを見てる……
やっぱり日向は本気で俺のことが好きなんだな。
でも俺は、その気持ちに応えることが出来なくて。
俺も、告白されても余所見せず及川さんを、ずっと真っ直ぐ見つめ続けるよ。
でもあなたは?
今は俺だけだって言ってくれるけど、いつか女を選んで、手の届かないところへ行ってしまうのか?
不安で不安で仕方ない……
なあ及川さん……あなたは余所見せず俺を見続けてくれますか?
「そうだね、確かに俺は前までふざけて近寄ってきた女の子達にヘラヘラと愛想を振り撒いていた。
その思わせ振りな態度で沢山の人達を傷付けて、本当に最低なことをしてたってつい最近気付いたんだ。
どうして気付けたんだと思う?」
「分かりません……」
最近気付けた?
俺も分からなくて、日向と一緒に首を傾げた。
すると及川さんは、目を細めて優しく、嬉しそうに笑った。
「今、本気で愛する人の傍にいるからだよ」
本気で愛する人……
及川さん、それはいったい誰ですか?
そんな優しく愛しそうに笑って、
本気で愛してる人って誰ですか
もし、自分じゃなかったら…… 俺はどうすればいい?
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