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第107話
及川side
本気で愛する人……
それが誰かなんて、言わなくても分かるだろ……
俺の言葉にチビちゃんは眉間のシワを消して、口角を下げて俯いた。
「チビちゃんは飛雄が好きって気付いた時、相手は男だって躊躇することはなかったの?」
「俺は……影山見ただけでドキドキして苦しくて、でもずっと見ていたいって思って。
アイツが可愛く見えるなんて、可笑しいってスゲー戸惑った。
でもこの気持ちが好きなんだって、恋してるんだって気付いた時、確かに男に恋したんだって自分にビックリしたけど、無意識に目で追っちまうし、学校ないときも影山のこと考えてて……頭ン中影山でいっぱいでどーしようもないから
だからもう、男とか考えるの止めたんだ。
好きなもんは好きなんだし、忘れることなんて出来なかったから。
俺は影山が好きなんだ、本気で好きだからそれで良いんだって思うことにしたんだ」
そう言った後にチビちゃんは嬉しそうに笑った。
本当に彼は前向きで、羨ましく思う。
俺もこんな風にもっと早く前向きになれてたら、誰も傷付けずにすんだのに。
今さら後悔したって仕方ないことなんだって分かってるけど、でもそれでもやっぱり考えてしまう。
もっと早く飛雄のこと本気なんだって、忘れることなんて出来ないってチビちゃんみたいに気付きたかった。
「俺はさ、チビちゃんみたいに素直な人間じゃなかったから、好きになった相手が男だってすごい戸惑ったんだ」
俺は中学の時の弱かった自分を思い出しながら、目を細めた。
懐かしい昔の、飛雄に恋したって気付いた時の自分を頭の中に思い浮かべた。
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