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第110話

及川side 仲なんて良くないよ……なんて酷いこと言ったのに、飛雄は次の日もその次の日も俺の傍に駆け寄ってくる。 『及川さん、サーブのコツ教えて下さい!』 『嫌だって言ってるでしょバーーカ!』 『なんでですか!? 前は教えてくれたのに』 あの日みたいに悲しそうなのはないけど、拗ねたような強気な顔で俺を見上げる飛雄。 それにホッとしながら、でもまだモヤモヤは俺の中から出ていってはくれない。 あーもー、なんなの? なんでこんなにモヤモヤして、胸が痛むんだろ? たぶんきっと、コイツが目の前に居るからイライラでモヤモヤしてるだけだ。 本当に腹立つな! 『前は前! 今は今! 嫌なもんは嫌なの!』 『なんで嫌なんですか!? 理由をちゃんと教えて下さい!』 『しつこいねお前は、ウザいからイライラすんの! あーーどっか行ってもぉーー! シッシッ!!』 『俺、犬じゃありません!』 『うるさい! シッシッ』 こうやって邪険にしても飛雄は、めげずに毎日俺の傍へやって来る。 でも最近、他の3年や2年のとこに行く姿を見てないような…… そう考えただけで、何故か心が軽くなった気がした。 まあ、先に俺の技をまた盗んでから、他の人へとか考えてるんだろーけど! 『及川さん、なんかボーッとしてます? 大丈夫っすか?』 『へ? あっ! ボーッとなんてしてないよ! こっち来んな、シッシッ!』 考え事してたらいつの間にか飛雄が俺の顔を覗き込んできていて、顔のドアップに俺はその場から飛びのいた。 何故か胸がドキドキうるさい…… なんなんだよ最近……飛雄のことでモヤモヤしたり、ホッとしたりドキドキしたり…… 俺、なんか変だ………… 俺を変にさせる飛雄なんて、大っ嫌いだ!! そんなモヤモヤのまま……何日か過ぎて ある練習試合の日 俺に向けられる強い視線 俺は大きなミスをしてしまった…… 『及川もういい 影山入ってみろ!』 『ハイ!』 監督の強声に頭の中が真っ白になった。 コートへ入っていく飛雄…… その姿を見た途端真っ白だった頭の中が、今度は真っ黒に塗り潰されていく。 ああ……ダメだ モヤモヤが大きくなっていく。

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