112 / 345
第111話
及川side
『お前何回言えば分かるんだボゲボゲボゲボゲボゲェ!!!!』
岩ちゃんに何度も何度もボールをぶつけられ、頭がグワグワする。
それでも俺は、立ち上がってはまたサーブを打ち続ける。
そんな俺に岩ちゃんは大きくため息を吐いた。
『お前、何をそんなに焦ってるんだ?』
何をって……それは、飛雄が俺からスタメンを奪おうとするから。
あの日の試合中、飛雄がずっと熱い強い視線で俺をガン見してくるから、それに何故かドキドキして上手くプレイ出来なくて……
あれはきっと飛雄の作戦だったんだ。
俺を睨んで緊張させて、潰すための……
それに俺はまんまと引っ掛かってしまった。
のんびりしてたら本当に飛雄にスタメンを奪われる
もっと、もっと強くならなくちゃ!!
もう一本サーブを打ったその時、いつものあの声が俺の鼓膜と身体を震わせた。
『及川さん、サーブ教えて下さい!』
『か、影山……』
笑顔でこちらに近寄ってくる飛雄
どんどん鼓動が早く、苦しくなってくる。
…………………………………………………………
来るな
『今のサーブすごかったっすね!』
来るな
『教えて下さい及川さん』
来るな こっちに来るな!!
『落ち着けボゲェ!!』
情けない、年下の飛雄に恐怖心を抱いてしまい、思わず拳を振り上げてしまっていた。
そんな俺の腕を素早く掴んで、岩ちゃんが力強く止めてくれる。
岩ちゃんが居なかったら本当に殴ってた。
俺、最低だ……
『あ……ゴメン……』
『何やってんだバカヤロウ……
影山、今日はもう帰れ』
『は、い……』
返事した飛雄の声はいつもと違って、震えているように聞こえた。
俯いていた俺は、そんな声に慌てて顔を上げた。
飛雄は悲しそうな瞳で俺を見つめていた。
その瞳を見た瞬間、また俺の胸がズキズキと痛み音をたてだす。
なんなんだよ本当に……クソっ!
苦しくなって目を逸らした俺に、飛雄はどう思ったんだろう……
走る足音と、体育館の扉が閉まる音が静まったその場に響き渡る。
立ち去った飛雄の顔を思い出して、俺はグッと下唇を噛み締めた。
『どーしたんだよお前ら! あんなに仲良かっただろ?
何があったんだ……言ってみろよ?』
『このままじゃあ影山にスタメン取られる!
アイツ天才なんだ! 監督もすごいって褒めてて。
俺には時間かかったこともなんでも簡単にこなして、どんどん俺を追い詰めてくる。
あんなクソガキに負けるわけにはいかないんだよ。
天才にだって負けない! 俺はバレーの頂点に立つんだ!
だから、影山にも誰にも負けない、立ち止まってなんていられないんだ!
もっともっと強くならないと────』
俺は思ったことを、一気に早口で捲し立てる。
そんな俺の頬に、岩ちゃんの固い拳が痛く強くめり込んだ。
その拳は鼻にも当たって、俺は鼻血をふきながら飛ばされた。
ともだちにシェアしよう!