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第114話
及川side
いくら揺すっても全然起きなくて、うぅ~と口をムズムズさせて眠そうな声を出す飛雄。
『こりゃ当分起きねーぞ……どーするべ?』
岩ちゃんが飛雄の頭をポンポンと叩きながら、長いため息を吐いた。
かなり揺すったけど起きないし、これは誰かが家まで送ってあげるしか他に方法はなさそうだ。
で? 誰が送るの?
『ここはやっぱり、主将の及川くんにお願いしたらいいと思いまーす!』
『賛成~! 責任持って後輩を送り届けるのが、主将の役目だろ?』
3年のチームメイト達が揃って、笑いながら無責任なことを言ってくる。
『えっ! なんなのそれぇ!
主将とか関係無くない?!』
『はぁ? 主将だろ? 責任逃れすんなよ!』
『主将は雑用係じゃありませんー!』
『あ、あの! 大丈夫です。俺が送ってきます……』
言い合いを始めた3年達に金田一が、焦った面持ちで名乗り出る。
1年に気を使わせるなんてカッコ悪いな……やっぱり俺が行こうかな。
なんて考えていたら、国見ちゃんが金田一を止めた。
『いや、さすがに重いと思うよ金田一。
やっぱり力のある及川さんにお願いした方が良いよ
ダメですか?』
国見ちゃんはいつもの無表情さを真剣な瞳に変えて、俺を真っ直ぐ見つめてくる。
あの国見ちゃんがこんな顔して、俺に頼んでくるなんて……
力は岩ちゃんや他の3年もあるのに、どうして俺なんだろ?
不思議に思って首を傾げていると、岩ちゃんが俺の肩を掴んだ。
『いや及川、俺が行くから大丈夫だ』
きっとあの日のことがあるから、岩ちゃん気を使ってるんだろーな。
まぁ、岩ちゃんがそう言ってくれるなら任せよう。
なんて思ってたけど岩ちゃんが飛雄に触れたのを見た瞬間、また胸がモヤモヤしだして落ち着かなくなった。
なんでか分からないけど、このまま岩ちゃんと飛雄を見送るなんて嫌だと何故か思ってしまった。
『い、いやあのさ岩ちゃん、やっぱ俺主将だし、俺が影山を送ってくるよ』
『及川……無理すんなよ』
『大丈夫だよ……俺パワーあるし、任せて!』
そう言って口角を上げて見せると、岩ちゃんは心配そうにしてたけど、でも似合わない優しい微笑みを浮かべて頷いた。
『じゃあ、任せたぜ及川』
『及川さんありがとうございます』
『よろしくお願いします!』
『え、あ、うん?』
俺が飛雄をおんぶすると、金田一と国見ちゃんが嬉しそうな顔をしてくる。
なんか今日の国見ちゃん、ちょっと変だよ?
なんで二人ともそんな嬉しそうなの?
俺は苦笑いしながら飛雄をおぶって、部室を後にした。
背中に感じる飛雄の熱い体温に、何故かドキドキが止まらなかった。
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