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第115話

及川side 背中が熱い…… これが飛雄からの熱なんだって意識するだけで、早くなっていく鼓動を落ち着かせることが出来ない。 苦しい……早く飛雄の家に行かないと、飛雄から離れないと、心臓が壊れてしまう。 『うぅん……』 飛雄がくぐもった声を出して、少し身動ぎをした。 それだけで、胸がドクンと大きく音をたてた。 重いんだからあんまり動かないでよ…… 本当は全然重くない。むしろ軽かったけど、悪態をついて気持ちを落ち着かせないとやってられない。 小走りして急いで飛雄の家に向かっていると、急ぎすぎて大きく揺らしてしまったせいか、 飛雄が寝ているのに無意識に落ちまいと、俺の首に回した腕に力を込めてしがみついてきた。 『くっ! ちょっと苦しいんだけど……』 『ん、んぅ……はぁ……』 『ちょっ!!』 耳元で響く飛雄の吐息。 なんか色っぽくて、頭の中が痺れる……そんな感覚がして顔がジワジワと熱くなっていく。 ドクンドクンと心臓がうるさい。 本当に壊れそう……! 『か、影山! 起きろよバカ!』 俺は必死に身体を揺らして飛雄を起こそうとしたその時、その震動で飛雄の体が動いて 俺の首筋に、柔らかい何かが触れた…… 『これって……影山のくち、び、る……?』 ちょっと、ウ、ソでしょ? 柔らかい感触と一緒に首筋をくすぐる、暖かい小さな吐息。 そして、しっかりとしがみついて離れてくれない、飛雄の腕。 その温もりを苦しくてドキドキしながらも、ずっと感じていたいと思ってしまった。 『あっつ…… すごい熱いんだけど……起きてよ影山……』 いや、起きたらきっと、この甘い感触を与えてくれる唇が離れてしまう。 恥ずかしいけど、ずっとキスしててほしい…… 『起きないで……ずっと触れててよ……   ……飛雄』 名前を呼んだ瞬間、飛雄が小さく笑った気がした。 どんな顔で笑ってる? 俺に名前を呼ばれて嬉しかったの? 最近、飛雄の悲しそうな顔しか見てなかった。 出会った頃は沢山笑顔を見せてくれてたのに また飛雄の笑顔が見たいよ 俺、飛雄の笑顔が 『好きだ』 そっか俺、飛雄のこと好きになっちゃったんだ…… 飛雄が 飛雄のことが…… 『好き 飛雄、好き……』

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