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第116話

及川side 俺、飛雄のこと好きなんだ…… その事に気付いた途端、顔が熱くなって恥ずかしかったけど、でもいつも感じていたモヤモヤが晴れて心が軽くなった。 でもまだ胸は、ドキドキ高鳴ったままだ。 それでも背中の熱の感触に、思わず口角を上げてしまう。 なんか嬉しくて、胸の辺りがポカポカしてる。 これが恋したってことなんだろうな…… さっきまで急いでいたのに、今はゆっくり歩いている。 もう少し飛雄の体温を感じていたいから。 でも、もう飛雄の家が見えてきた。 名残惜しさを感じながらも、俺はインターホンを押した。 すると家の中から小走りするような足音が近づいてきて、玄関の扉から綺麗な笑顔を浮かべた女性が出てきた。 たぶん飛雄のお母さん。 『ハーイ! あら、どちら様ですか?』 『こんばんは。 俺、飛雄くんと同じ学校に通ってる、及川徹といいます。 飛雄くんが部活で疲れて眠ってしまったみたいで、送り届けに来ました』 『えっ! 飛雄寝ちゃったの? 及川くんわざわざごめんなさいね。 重かったでしょ? ありがとね~』 『いえ、大丈夫です』 ニコヤカに挨拶してからしゃがんで飛雄を下ろそうとしたが、しっかり首に腕を回していて離れない。 飛雄のお母さんも後ろから引っ張るが、なかなか離れなくて、首がしめられて苦しい。 『うぐっっ!! ちょっ……まっ! ぐるじいです!』 『ご、ゴメンね! すぐに飛雄を離れさすから!』 『んむぅ……』 『コラっ飛雄! 離れなさい!!』 『ゲホ、ゴホッゴホゴホゲホっ!!』 『及川くん大丈夫!!』 飛雄のお母さんが必死に引っ張るほど、何故か飛雄の腕の力が強まって苦しい。 『もぉーー! なんで離れないのよ飛雄! そんなに及川くんと離れたくないの?』 『え……』 飛雄のお母さんの言葉に、また鼓動が早くなった。 きっとそうじゃないって分かってるけど、それでも期待してしまう。 飛雄……俺と離れたくないから、必死にしがみついてるの? 違ったとしても、俺は飛雄と離れたくないよ…… だから、苦しいけど……ずっとこのままが良いって 願ってしまった。 『お、及川くん、顔真っ赤よ! ゴメンね、苦しいわよね! もぉー離れなさい!』 『あっ! だ、大丈夫です!』 顔が真っ赤なのは、飛雄とこうやってくっついているから…… なんて、恥ずかしくて言えないけど。 本当はこのままが良いけど、お母さんが困ってるからそろそろ離れないと。 俺は眠る飛雄に届くことを祈りながら、何度も心の中で飛雄の名前を呼んで、ゆっくり腕を撫でてあげた。 飛雄、飛雄…飛雄……大丈夫だよ……明日も会えるから 俺の声が聞こえたのか飛雄の腕の力が弱まって、引っ張っていたお母さんが俺から飛雄を離れさせた。 『あーーやっと離れた……ごめんなさいね及川くん』 『大丈夫です……じゃあ俺、帰ります』 『及川くんありがとね。良かったらまた来てね』 『ハイ。じゃあ、失礼します』 そう笑って一礼してから、帰路につく。 まだ胸が高鳴ってる…… 本当はずっと飛雄の傍にいたかったけど……明日も会えるから。 あの言葉は飛雄に言ったのもあるけど、まだ離れたくないと我が儘になる俺の心に言い聞かせた言葉でもあった。 飛雄、好き……明日も会いたい……

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