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第118話

及川side 付いて来てと言われ、女の子と一緒に屋上へと向かう。 屋上で告白か……ベタだな。 なんて思いながらも笑顔は消さない。 それがいい男ってもんでしょ? 女の子が屋上の扉を開けるとそこには、二人の女の子達が待っていた。 え? もしかして女の子3人で俺の取り合い? モテるのは良いけど、こんなトラブルに巻き込まれるのはゴメンだ。 笑顔は崩さず内心では口を歪ませていると、ずっと眉を下げていた女の子が唐突に口を開いた。 『突然こんなとこに連れてきてゴメンね。 私達ちょっと及川くんに聞きたいことがあって……』 『聞きたいこと? 何?』 どうやら告白ではなさそうだ。 深刻そうな顔をして、言いにくそうに口をつぐんで俯く女の子。 そんな顔して……そんな俺に言いにくいことなの? その子の代わりに別の気の強そうな子が、出し抜けに俺の腕を掴んで詰め寄ってきた。 『な、何?』 『及川くんってホモなの!?』 『はぁ?』 突拍子のないことを言い出す彼女に、俺は思わず間抜けな声を出してしまった。 もう二人も控え目に、俺の様子を窺うように悲しそうな目で見つめてくる。 どおして俺がホモってことになってるんだ? 『及川ファンクラブの皆さんが及川くんがある人に恋してるって言ってて、それが誰なのか私達も気になって及川くんを観察してたの……』 『ファンクラブ……観察って……なんなのそれ……』 『そしたら及川くんが最近1年の男子と仲が良すぎるなぁ〜って気付いて…… しかも……今日その子のこと名前で呼んでたから……もしかしてって……思って……』 仲が良すぎるって、俺は昨日まで飛雄のこと嫌いだったのに……飛雄に恋したって、なんでバレた? それにホモって……俺はホモじゃない! ……ホモじゃない? ドクンドクンと心臓がうるさく脈打ち始めた。 さっきまでの余裕な笑顔を浮かべることが出来ない。 顔がひきつり、背中に嫌な汗が滲む。 『及川くん! あの影山って子が好きなの? 及川くんがホモなんて嫌だよ! ホモなら、女の子を好きにはならないの?』 『お、俺は……えっと……』 上手く喋ることが出来ない。俺ってホモなの? 飛雄を好きってことはホモってこと? 誰かを好きになったのは初めてで、ドキドキして嬉しくて…… でもよく考えてみたら、飛雄って男じゃん。 俺、男の飛雄に恋して、それってホモ? 嘘でしょ? 『男が男を好きって……おかしいよね?』 『ホモとか……嘘だよね? 及川くん違うって言ってよ!』 おかしい? じゃあ、この恋心もおかしい…… 飛雄にドキドキして、アイツの顔見たら嬉しくなって、可愛くて……好きで好きで…… でもこれって、おかしいこと? 変? 『ホモなんて気持ち悪いよ!!』 気持ち悪い…… 頭を強く殴られるような衝撃が、俺を襲った。 違う……俺はホモじゃない……違う 飛雄の笑顔が脳裏を掠める。 “及川さん!” 俺の傍に寄ってくる飛雄の可愛い声が、姿が、笑顔がドンドン黒く塗り潰されていく。 飛雄が……す、き いや、違う! 違う! 俺は、俺は…… 『ホモじゃな、いよ……』 『ほ、本当?』 『本当だ、よ……飛雄は、バレー部の後輩だから仲良くしてただけだよ。 好きになるわけないじゃん……』 『そ、そうなの? 良かったぁ!』 『及川くんホモじゃないんだぁ!!』 『じゃあ私達、女だからって及川くんを諦めなくても良いんだね?』 『うん……』 『好きなままでも良いんだよね?』 『うん……そーだね……嫌いになられたら寂しいよ。 俺、女の子好きだし……』 『良かったぁ!!』 嬉しそうにはしゃぐ女の子達を、ただ呆然と眺めた。 俺の中の飛雄が、何度も何度も俺の名前を呼んでいる。 ドンドン遠くへ離れていく。 飛雄、飛雄、待って! 俺は飛雄が…… 好きじゃおかしいんだ……ダメなんだ…… 『良かった、及川くんがホモじゃないって分かって安心した!』 『このまま及川くんのこと諦めないといけないのかと思った』 『良かったねぇ~、じゃあ及川くん、また明日ね!』 『及川くんバイバ〜イ』 『うん……バイバイ……』 勝手に喜んで安心して、女の子達は笑顔で立ち去っていく。 でも俺は、頭の中がグチャグチャで真っ黒で、その場からしばらく動くことが出来なかった。 飛雄の笑顔が俺の胸を締め付け、苦しくさせる。 飛雄……好き…好き…… でも、ダメなんだね────

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