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第123話

及川side 俺は高校2年になり、今も色々な女の子と付き合ったり別れたりを繰り返していた。 別れる時は絶対彼女から。 何をしてしまったのか全く見当も付かないけど、彼女達は泣いたり怒ったりして俺から離れていった。 そして問題がもう1つ、俺の周りに集まってくる女の子達に、よく見かけるようになったある変化が起こった。 『ねーねー私の髪型どお? 似合ってる?』 『うん、可愛いよ』 『ねぇー私も髪ショートに変えたんだぁ~! どーかな?』 『千花ちゃんも似合ってるね。可愛いよ。 でもどーしたのそんな短くして?』 『だって及川くんこーいう髪型好きなんでしょ?』 『へ?』 女の子の言葉に、思わず目を丸くした。 そんな俺に女の子は、不安そうに首を傾げた。 『違うの? もしかして似合ってない?』 『あ、ううん! 似合ってる、もちろん可愛いよ』 『良かったぁ~♡』 『でもどーして俺の好みがショートヘアーだと思ったの?』 『だって及川くんの元カノ、ほとんどがショートだったから。 及川くん好きなんだろーなぁと思って♡』 ニコニコ楽しそうに笑う女の子達に、俺はますます目を丸くさせられた。 そー言えば……前の彼女も髪短かったような…… 思い返してみればその前も、そのまた前もショートの子と付き合ってた気がする…… 俺は別に、ショートヘアーが好きなわけじゃない。 もしかしたら俺……意識はしてなかったけど、飛雄が好きすぎて飛雄に似たショートの子を無意識に選んでた……のか? そう思った途端、顔がどんどん熱くなっていくのを感じた。 『及川くん顔真っ赤だよ? ……大丈夫?』 『本当だ!! どーしたの及川くん?』 『え……いや大丈夫……』 そう答えたけど女の子達の慌てた強声に、周りにいた女の子達まで集まってきた。 『何々?』 『どーしたの!?』 『及川くん風邪?』 なんでこれぐらいのことで皆集まってくんの!? 別に顔が赤いからって、風邪じゃないんだけど! てゆーかこの顔見られると、恥ずいんだけど…… 見られたくなくて顔を隠すため慌てて俯くと、突然足下に女の子が倒れ込んできた。 『うわっ!!』 『きゃあぁぁぁっ!!』 『ちょっと何ぃ!?』 『いたたたた……』 起き上がった女の子が、膝を押さえて踞っている。 もしかして、今ので足怪我した? 『ちょっと君、大丈夫?』 踞っている女の子の様子を窺うためしゃがんで、長い綺麗な黒髪に触れながら顔を覗き込もうとしたら、女の子が顔を勢い良く上げて目を大きく見開いた。 『あ……本当に王子様っているんだ?』 『は? 王子様?』 王子様って……何言ってんのこの子? てゆーか俺、早くここから逃げたいんだった。 ちょっとこの子を利用させてもらおう。 『君、怪我してんの? 大丈夫? 早く保健室に行った方が良いよ。俺が連れてってあげる!』 『えっ! あ、え、ちょっと!!』 俺は素早く女の子をお姫様抱っこして、保健室へと走った。 『あっ! 梓ぁーーーー!!!!』 『きゃーー! 及川くんにお姫様抱っこしてもらうなんてズルーーイ!!』 『ちょっと及川くーーん!』 後ろの方で色々な声が聞こえたけど、それを全部無視して逃げるように保健室へと猛烈ダッシュした。

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