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第125話

及川side 『ねーねー岩ちゃんきのーね、 すっごい変で、面白い子に会ったんだよ~』 『んだよ変って……』 次の日 昨日出会った面白くて珍しい子、梓ちゃんの話をすると、岩ちゃんが横目で俺をチラリと見た後フッと鼻で笑った。 『なんなのその反応?』 『あ? 別になんもねーよ? で、そいつそんなおもれーのか?』 『絶対何かあるでしょ? まぁ、いーけど…… その子新藤梓ちゃんって言うんだけど、イケメンは性格悪いとか、俺のこと王子様とか言うんだよ! ね、変な子でしょ? そんなこと言う子あんま見ないよねぇ~』 『王子様? なんだそりゃ。 でも、性格悪いは当たってるじゃねーか』 『当たってないよ! 及川さんこんなに性格良くて、いー人なのに!』 『ハハッ、お前がいい人? 笑わせんな』 『ちょっとそれどう言う意味?』 岩ちゃんのバカにしたような笑いに頬を膨らませていると、岩ちゃんが何故か楽しそうに笑って、俺の髪をグチャグチャに掻き回してきた。 『ワワッ! 止めてよ岩ちゃん! この髪セットするのにどれだけ時間かかったと思ってんの!?』 『知らねーよクソが!』 なんでそんなに機嫌良いのさ? 今も尚俺の髪を掻き回してくる手から逃れようと暴れていたら、後ろの方から笑い声が響いてきた。 『アハハハハーー! なんかすっごく楽しそうだねぇ~』 『へ? あー梓ちゃん!』 『コイツが新藤梓?』 『そーでーす。私が新藤梓でーす!』 ニコニコと両手でピースしながらさっきまで話していた人物、梓ちゃんがこちらに近付いてきた。 普通話したこともない人に、ピースしながら自己紹介しないよね。 『ね! 変な子でしょ?』 『変じゃないよ。及川くんの髪の方が変だよ~』 『へ? あっ! 岩ちゃんがグチャグチャにするからぁー!』 『うっせぇボゲェ』 『もぉーうっせぇじゃないでしょ! またセットし直さなくちゃ…… ところで梓ちゃんどーしたの? 俺に何か用?』 岩ちゃんを一睨みして手グシで髪を整えながら梓ちゃんに問うと、彼女はつまんなそうに唇を尖らせた。 『なぁ~にぃ~? 用事がなかったら声かけちゃぁいけないの? 冷たいね、及川くん……』 『えっ!? ゴメンゴメン! もちろん用なくても話そうよ』 『フフフ、冗談よ冗談! 実は昨日のお礼がしたくて及川くんを探してたんだ。 昨日、優しぃーく怪我手当てしてくれたから、お礼にクッキーあげるね!』 『え、わざわざ? あっ、このクッキー美味しいよね! 俺このお店のお菓子好きなんだ、ありがとね』 直接傷口に消毒液かけたり、はっきり言って全然優しくしてないけど……わざわざ買ってきてくれるなんて…… 『梓ちゃんって意外と良い子なんだねぇ~』 『わぁーー……意外って言われると結構ムカつくもんだねぇ。昨日はムカつくこと言ってゴメンねぇー』 『全然ゴメンと思ってないでしょ?』 ニコニコと裏のある笑みを浮かべて話していると、今まで黙っていた岩ちゃんが突然笑いだした。 『ハハハっ! 本当におもれー女だな新藤! 及川とこんなに馬鹿話出来る女初めて見たわ!』 どことなしか嬉しそうに笑う岩ちゃんに、つられて俺も笑った。 すると梓ちゃんが態とらしくまた唇を尖らせて、岩ちゃんの腕をつついた。 『何馬鹿話って~ひーどーいー岩ちゃーん!』 『は? 岩ちゃん?』 梓ちゃんの岩ちゃん呼びに、驚いたように目を見開く岩ちゃん。 そんな岩ちゃんに梓ちゃんは微笑んだ。 『及川くんが岩ちゃんって呼んでたから、私も呼びたくなったの! ダメかな? 岩ちゃん!』 『いやダメじゃねーけど……ホント新藤って変な女だな……』 気恥ずかしそうに俯く岩ちゃん。 そんな岩ちゃんの腕を、今度は俺がつついた。 『あーれー岩ちゃん、女の子に岩ちゃんって今まで呼ばれたことないから、もしかして照れてんの?』 『はぁ!! そんなんじゃねーよボゲ川!』 『照れてるぅ~~! 岩ちゃん可愛い~♡』 『岩ちゃん可愛い~♡♡』 『し、新藤まで……うっせーぞボゲどもぉ!!』 本当に梓ちゃんは今まで見たことないほど明るい珍しい女の子で、俺達三人はすぐ仲良くなった。

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