127 / 345

第126話

及川side すっかり仲良くなった俺達は放課後一緒に遊んだり、一緒に昼ご飯を食べる仲までになっていた。 今日岩ちゃんは日直とかで、5時間目の授業の準備があると言ってさっさと食べて行ってしまった。 だから屋上にて二人で食べていると、梓ちゃんが俺をジロジロ見ながらポツリと言った。 『及川くんって本当イケメンだよねぇ……』 『は? 何突然?』 いつも通りの牛乳パンをかじってから、梓ちゃんを見返す。 『クラスの女子がさ、及川くんと私が最近仲が良いから、すんごい羨ましがるの。 で、好きな人のタイプとかってある?』 その質問に、一瞬ドキッと心臓が脈打ったのが分かった。 一々反応しないでよ俺の体…… 『クラスの女子に聞いてこいって言われたの?』 『……うん……』 何故か梓ちゃんは俺から目を逸らしながら、気まずそうに頷く。 梓ちゃんらしくないハッキリしない反応に、首を傾げた。 最近誰とも付き合ってなかったな…… 梓ちゃんが普通の女の子と違って珍しくて、一緒にいるとすごい楽しかったから…… ずっと考えてること “いつか良い女の子が現れて、飛雄は過去の存在になる” だからもしかしたら……梓ちゃんなら…… 『俺のタイプの子さ……梓ちゃんだよ』 『え?』 俺を真っ直ぐ見つめてくる梓ちゃんの顔が、少しずつ赤くなっていく。 『俺、梓ちゃんのこと好きかも…… ねぇ、俺達、付き合おっか』 『うん……』 なんか本当に梓ちゃんらしくないね……そんなに真っ赤になって…… 梓ちゃんは飛雄以上の、俺の特別になってくれる? 『岩ちゃん、俺達付き合うことにしたから』 『はぁ?』 放課後部活が終わって、岩ちゃんと一緒に帰る。 もちろん付き合い始めた梓ちゃんとも。 俺の突然の報告に、岩ちゃんは口をポカンと半開きにさせて目を大きく見開いた。 『マジかよ?』 『うん、そんなに驚くこと?』 今もまだ口を開けっぱなしにしている岩ちゃんに、小さく笑って隣に立つ梓ちゃんに目線を向ける。 俺の報告にまた赤面になって、似合わない顔をしている。 『どーしたの梓ちゃん? なんか普通の女の子みたいだよ?』 真っ赤に染まった頬をつつくと梓ちゃんは、顔色はそのままでコラッと拳を振り上げた。 『私はどっからどー見ても普通の女の子ですぅ~』 『アハハ、良かった。ちゃんとツッコミあった!』 『なんなの? ツッコミ待ちだったの? だったらもう一回なんかボケてよ。 そしたら頭にいたぁーい一撃を与えてあげるから』 『アハハ、いりませーん! 俺はやっぱりボケよりツッコミが良いなぁ~』 『……お前はツッコミよりボケの方が似合ってるべ』 『あいたっ!』 いつもの梓ちゃんらしい返事に口角を上げていると、岩ちゃんが小さくため息を吐いて俺に軽くチョップしてきた。 なんなの、そのため息? どーせ、次の彼女は梓ちゃんか、コロコロかえすぎだとか思ってるんでしょ? でもきっと梓ちゃんなら大丈夫だと思うから、安心してね岩ちゃん! 『新藤……もし及川に変なことされたらすぐ言えよ! 絶対だぞ!』 『うん……ありがとう岩ちゃん』 『ちょっと! 変なことなんてしないからね!!』 なんかいつもより真面目そうな瞳で、真っ直ぐ梓ちゃんを見つめる岩ちゃん。 なんなのその目? そんなに心配しなくても大丈夫だよ! さすがの及川さんも傷つくよ…… なんて思いながら梓ちゃんの方を見ると、梓ちゃんも俺の方を見ていて、目が合うと顔を赤くして逸らされた。 さっきはいつもみたいに笑って話してたのに、 なんか本当に普通の女の子みたいになっちゃって…… やっぱり女の子にとって、男と付き合うって特別なことなのかな?

ともだちにシェアしよう!