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第132話
及川side
チビちゃんは手の甲で目を擦りながら、何度も鼻を啜っている。
あーあ、ひどい顔。
たぶん、俺もだよね……
俺もチビちゃんもこの恋に必死だから、止めることが出来ないんだ。
「俺ね、ずっと焦って、すごいチビちゃんを敵視してた。
君は学校一緒だからずっと飛雄の傍に居られるし、相棒だし……
羨ましくて、飛雄を奪われないかハラハラしてムカついてたんだ。
メガネくんも居て、それも不安なんだけど。
やっぱり飛雄にとって、チビちゃんは特別だと思うから。
絶対負けたくない、飛雄は渡さないって焦って……」
「それで、メールするなって言ったんですか?」
チビちゃんの恨めしそうな視線に、俺は苦笑するしかなかった。
「はっきりメールするなとは言ってないよ。
でも、しないで欲しいと願ったのは事実。
俺、情けないよね。チビちゃんの存在が大きすぎて焦りまくってた……」
なんか恥ずかしくてチビちゃんの顔が見れない。
そんな俺にどう思ったのか分からないけど、チビちゃんは長いため息を吐いて、そして小さく笑った。
「いつも自信満々そうな大王様が、そんな弱気になるなんてビックリした。
影山からメールしないって言われて、大王様にスゲームカついた。
でも、そんなこと思ってたなんて。
あんな余裕そうだったのに……
それだけ、影山のことが好きすぎるから、不安になったんですね……」
さっきまであんなに泣いてたのに、今のチビちゃんは赤い目を細めて優しく笑っていた。
そんな彼に俺も、微笑んで見つめ返した。
「…………俺、大王様のこと、遊び人ってゆーか、
ふざけた不真面目な人だと思ってました」
「ちょっと、何それ……」
「でも、それは誤解だったって分かったから。
あんな人に影山を渡したくない、影山を幸せに出来ない奴が影山に触るなって思ってた。
俺なら影山を幸せに出来るのにって……思った。
でも……」
チビちゃんの瞳がまた潤んで、目尻から涙が零れ落ちた。
「でも影山はそれを望んでないから。
影山が幸せにしてほしい、一緒に傍にいてほしいと願う人は大王様だって
あの時、影山が大王様の名前を呼んだ時に、はっきりと分かった……
悔しいけど……でも、大王様なら影山を幸せに出来る……
そーだろ?」
涙を拭ってチビちゃんは、俺を強い眼差しで見据えてきた。
その問いに、俺の答えはもう決まっている。
「飛雄を絶対幸せにするよ 必ず!」
俺しか飛雄を幸せに出来る人はいない。
不敵に笑って見せると、チビちゃんは泣きながら嬉しそうに微笑んだ。
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