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第133話
及川side
チビちゃんはベットに横になっている飛雄に視線を向けてから、スクッと立ち上がった。
「大王様、もう一度確認させて下さい。
影山を俺の分まで絶対幸せにしてくれますね?」
立ち上がったチビちゃんの言葉に大きく頷いてから、俺も同じように立ち上がった。
そんな俺にスッと手を差し出してくるチビちゃん。
「絶対ですよ。
もしまた影山を泣かせたら、力ずくでも奪って今度は俺が影山を幸せにします!」
「そんな日は絶対来ないよ、大切にする。
飛雄は俺が幸せにするんだから!」
「ハ、イ……」
真剣にチビちゃんの瞳を見つめて、そう断言して彼の手を強く握った。
彼は潤んだ瞳で手を握り返してから、またもう一度飛雄に視線を向けて涙を目尻に浮かべて笑った。
「影山……早くよくなれよ。
それでまた一緒に……いっぱいバレーしような!!」
泣きながら飛雄を見つめるチビちゃんの横顔は、すごく切なくて
でもすごく綺麗だった。
あぁ、本当に彼は飛雄を愛していたんだね……
チビちゃんは深く頭を下げてから、ゴシゴシと服で涙を拭って
最後に太陽のような眩しい、とびっきりの笑顔を俺に見せて部屋から立ち去っていった。
チビちゃん……約束するよ
俺が絶対、飛雄を幸せにするから
チビちゃんが立ち去ってドアが閉まったのを確認してから、俺はゆっくりベットに眠る飛雄に近付く。
ベットに肘をついて、愛しい飛雄の顔を覗き込む。
可愛い寝顔が見れると思っていたのにその顔は、濡れて夕日に照らされて光っていた。
「飛雄……」
なんで泣いてるの? 怖い夢でも見てる?
いや、もしかしたら飛雄……俺とチビちゃんの話を聞いてたのかもしれない。
俺はそっと飛雄の頬に触れてみた。
飛雄は触れた瞬間、ピクッと少し身動ぎをした。
やっぱり、目はつぶってるけど起きてる。
飛雄……全部聞いてたんだ
俺が飛雄と会えなかった二年間、どれだけお前を想って苦しんで泣いてたか……
どれだけお前を愛しいと思って、ずっと求めていたか
それも全部聞いてたの?
俺の想いを知って、涙を流してくれたの
愛しい……俺はお前が好きで好きでどうしようもなくて
あの二年間ずっと忘れず、お前のこと求めてた
『影山はあんたのせいで泣いてたんだ!』
あの時のチビちゃんの言葉、俺のせいで泣いてたの?
どしてか分からない。
俺はこんなにもお前を愛しているのに、気が付かないうちに飛雄を傷付けていたのか……
ゴメンね飛雄……
俺はお前を愛しているんだ
飛雄を悲しませたくない、嫌われたくない
なんで泣いたのか分からないけど、もしかしたら俺と別れようと思っていたのかもしれない。
でも、話を聞いていたなら、俺の気持ちは分かったでしょ
だからお願い、これだけは言わせて……
「飛雄……またお前の笑った顔が見たいよ
愛してる……」
飛雄の耳元でそう呟いてから、そっと頬にキスをおとした。
「オヤスミ、飛雄……」
飛雄のサラサラな髪を撫でてから、泣きそうな気持ちを押し込めて
口角を上げながら俺は、部屋を後にした
飛雄、飛雄……ずっと、愛してる
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