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第136話

母さんがテレビを見ている隙に、外に出た。 俺が行ったって何にも出来ないかもしれないけど、それでも俺のせいで及川さんが苦しんでるんだとしたら、ほっとけない傍にいたいんだ。 「影山!」 走って及川さんの所へ向かおうとしたその時、後ろからいつも聞き慣れた日向の声に呼び止められた。 「日向……もしかして、俺の見舞いに来たのか?」 昨日の及川さんと日向の話、全部聞いてしまったから気まずくて仕方ない。 まさか自分の恋人と相棒が、俺を取り合いするなんて……日向の顔がまともに見れねーよ 「……風邪酷くなってないかなって、心配になったから……もう動いて大丈夫なのか?」 「あぁ、もう大分良くなったから大丈夫だ……」 「そっか……良かった。 で、どこ行くつもりだったんだ?」 「…………」 質問になんて返したら良いのか分からない。 日向はまだ俺のこと好きなんだろーか? 及川さんに俺を幸せにしろって言ってたけど、じゃあもう俺のことはなんとも思ってないのか? 普通に相棒として、友達としてで良いのか? 分からない……こんなこと初めてだから。 及川さんのとこに行くって言っても良いのかそれさえも。 上手い返事が思い付かず黙っていると、日向が眉を下げて小さく笑った。 「大王様のとこに行くつもりだったんだろ?」 「!? どーして分かったんだよ!」 日向の言葉に俺は、大きく目を見開いた。 そんな俺に日向は、今度は可笑しそうに笑った。 どこに行くのか当てられて焦ったけど、日向の笑った顔に拍子抜けする。 もう大丈夫ってことか? 「だってお前がスゲー気まずそうな顔するから、普通に分かるし。 でも、お前まだ病み上がりだろ? 好きな人に会いたいって気持ちは分かるけど、また風邪ぶり返したらどーすんだよ。 会いに行くのは良くなってからでもいーんじゃねーの?」 「……及川さん俺の風邪がうつって、今寝込んでるらしい……」 「えっ!!」 「俺のせいで及川さんが苦しんでるのに、呑気に寝てなんかいられねーよ! 及川さんが辛い時には傍にいてやりてーんだ! これでもし行かなかったら、俺たぶん後悔すると思うから」 及川さん……俺は今すぐあなたに会いたいんだ。 傍にいてあげたい 俺が一番苦しかった時に、あなたは傍にいてくれたから。 夢の中でも、目覚めても…… 眠ってても温かかった だから俺だって傍にいてやりたい だって俺は、及川さんの恋人だから。 「なんだよ……そういうのでも俺は大王様に勝てねーんだな」 日向は悲しそうな、でも優しい笑みを浮かべて俺を見つめてくる。 その笑みにどうしたらいいのか分からなくて、俺はただ日向を見つめ返すことしか思い付かない。 「好きだから……お前のことが俺も大王様も本気で好きだから、お前の風邪も何もかも受け入れたいって思ったんだ」

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