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第137話
風邪も、何もかも? なんだよそれ……
「本気だからお前の風邪が移っても構わない。
お前の風邪さえもほしいと思った。
でも、大王様は移って、俺は移らなかった……
この恋に負けたのに、こんなことでも負けちゃったんだな俺……」
「風邪なんて移ったらダリーだけじゃねーか。そんなのもらわない方がいーだろ?」
「それだけお前のこと本気だったってことだよ」
潤んだ瞳でこちらを真っ直ぐ見つめていた日向が、突然俺の腕を引っ張って抱きしめてきた。
「ひ、日向!」
「ゴメン影山、今はこのままでいてよ。頼む……」
突然のことでビックリして咄嗟に離れようとしたけど、日向がもっと力を込めて強く抱きしめてくる。
日向の少し波打った声に胸がぎゅっと締め付けられる感覚がして、俺は下唇を噛んで離れることをやめた。
そんな俺に日向は小さく息を吐き出してから、強めていた腕の力を抜いてくれた。
「影山、俺、まだお前のことやっぱり好きだよ……」
日向、まだ俺のこと好きなんだ……
その気持ちにやっぱり応えることが出来なくて、俺が及川さんを求めれば求めるほど日向を悲しませているんだな。
俺もずっと及川さんのことが好きで、及川さんと離れてた2年間、本当に辛かったから。
誰かに恋してこの想いが相手に伝わらないことが、何よりも辛くて悲しいってこと俺も知ってるから。
だから、日向の気持ちに応えられないことが、悲しくて、でも及川さんが好きで……俺は
「日向……ゴメ……」
「分かってる! 言わなくても……
俺がお前に本気で恋してるように、お前は大王様のことが本気で好きなんだって嫌でも分かるよ。
それだけお前のこと見てるから……」
悲しく声を紡ぎ出す日向が、また俺を強く抱きしめる。
それが苦しくて、でも今は離れてはいけないって分かるから……
「中学初めて出会った、あの日からお前に恋してたんだ。
好きな人に好きな人が居たって分かっても、そう簡単にこの気持ちを捨てることなんて出来るわけ無いだろ?
でもだからって俺は、お前を困らせたくないんだ。
まだ好きだって気持ちは消せないけど、少しずつでもちゃんと、お前のこと友達だって思えるようになるから……
だから、俺のこと避けないでほしい!
お前とはずっと、今度は友達として傍にいたいって思えるようにするから!
だから!」
「ざけんなボゲェ!!
俺は、ずっとお前とバレーがしてーんだ!
ずっとずっとお前には親友で、相棒でいてほしいと思ってる!
お前は初めて、俺に出来た大切な大切な親友なんだ……
避けるわけねーだろ! ずっと親友でいてほしいって頼むのは俺の方だボゲ日向……」
ずっと孤独だった俺に、初めて本当の親友だと思える人が出来た。
話してると楽しくて、お前が昼休みとかバレーに誘ってくれるのがいつも嬉しくて。
バレーは前から好きだったけど、お前とやるバレーはもっと好きだって思える。
楽しくて楽しくて
「俺はお前とずっとバレーしてぇ!
これからもずっとずっと……高校卒業しても一緒にバレーしたいって思える、そんな親友で傍にいてほしいって思ってる!
だから、だから日向……これからも一緒にバレーしようぜ……日向……」
「か、影山……影山ぁ!!」
涙が次から次に流れて、止めることなんて出来ない。
抱きついて、俺の胸に顔をうずめる日向の鮮やかなオレンジ色の頭に涙が零れ落ちる。
鼻を啜る音で、日向も泣いてるんだって分かる。
今俺達二人とも、誰にも見せられないほど、グッチャグチャな顔してるんだろうな。
誰かに見られたら恥ずかしいけど、でもお前が一緒ならそれでもいっか。
そう思えるほどの相手、大親友ってことだよ日向
「これからも親友でいろ、日向!」
「あったり前だ!」
涙が乾いた時俺達はもっと深い、掛け替えのない親友になっていることだろう。
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