139 / 345
第138話
一頻り二人で泣きあっていたら、なんかスゲースッキリした。
目を赤くさせた日向が俺の胸から顔を離して照れくさそうに、でもニカッと笑えるぐらい日向もスッキリしたみたいだ。
泣いて暗い顔してた奴が、さっきまでのことは無かったかのように穏やかに笑っている。
「……影山、今から大王様のとこ行くんだろ?
本当に風邪は大丈夫なんだな?」
「なんともねーよ! 寧ろ今はスゲー頭スッキリしてる」
「…………そっか……
だったら、行ってこい!!」
「おわっ! あっぶね!」
日向が大きな声を出して、背中を押してきた。
その衝撃で転けそうになった俺は、なんとか踏み止まって日向を睨み付けた。
「何すんだ日向ボ、ゲ……」
思いっきり文句を言ってやろうと思ったけど、あまりにも日向が切なそうに笑ってたからうまく言えなかった。
「影山!
また、またいっぱいバレーしような。
約束だ!!」
「…………おう!」
俺の返事に日向は泣きそうな笑顔を浮かべて、手を振りながら走り去っていった。
俺達はこれからもずっと親友だから……
また笑顔で、いっぱいバレーが出来る
そーだよな 日向!
俺は涙が零れてしまいそうな涙脆い目を擦って、及川さんのもとへと走った。
俺と同じ風邪ならかなり頭が痛くなって、フラフラで寝込んでいるかもしれない。
俺は母さんが看病してくれたけど、及川さんは一人暮らしだ。
上手く動けないのに誰も傍にいないなんて、スゲー不便で、きっと心細い思いをしているはずだ。
弱ってる時はなんかスゲー寂しくなって、誰かに傍にいてほしくなると思う。
だから恋人である俺が傍にいてあげたいんだ。
及川さんのアパートに着いて、チャイムを鳴らす。
及川さんが出てくるまで、ずっとソワソワして落ち着かない。
キョロキョロと辺りを見渡していると、
扉が開いて愛しい人、及川さんが出てきた。
「ハイ……え? 飛雄……」
付けていたマスクを外しながら、大きく目を見開いて俺を見つめてくる及川さんを見たら、なんでか涙が零れそうになった。
「あ、あの及川さん……風邪で休んでるって聞いて…その、会いに、来ちゃいました……」
あなたの姿を見ただけで、声がどうしても震える
及川さんへ触れようと手を伸ばした次の瞬間、
「飛雄!!」
及川さんが俺の腕を大きな力強い手で引っ張って、優しく抱きしめた。
「飛雄……会いたかった……」
ともだちにシェアしよう!