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第138話

一頻り二人で泣きあっていたら、なんかスゲースッキリした。 目を赤くさせた日向が俺の胸から顔を離して照れくさそうに、でもニカッと笑えるぐらい日向もスッキリしたみたいだ。 泣いて暗い顔してた奴が、さっきまでのことは無かったかのように穏やかに笑っている。 「……影山、今から大王様のとこ行くんだろ? 本当に風邪は大丈夫なんだな?」 「なんともねーよ! 寧ろ今はスゲー頭スッキリしてる」 「…………そっか…… だったら、行ってこい!!」 「おわっ! あっぶね!」 日向が大きな声を出して、背中を押してきた。 その衝撃で転けそうになった俺は、なんとか踏み止まって日向を睨み付けた。 「何すんだ日向ボ、ゲ……」 思いっきり文句を言ってやろうと思ったけど、あまりにも日向が切なそうに笑ってたからうまく言えなかった。 「影山! また、またいっぱいバレーしような。 約束だ!!」 「…………おう!」 俺の返事に日向は泣きそうな笑顔を浮かべて、手を振りながら走り去っていった。 俺達はこれからもずっと親友だから…… また笑顔で、いっぱいバレーが出来る そーだよな 日向! 俺は涙が零れてしまいそうな涙脆い目を擦って、及川さんのもとへと走った。 俺と同じ風邪ならかなり頭が痛くなって、フラフラで寝込んでいるかもしれない。 俺は母さんが看病してくれたけど、及川さんは一人暮らしだ。 上手く動けないのに誰も傍にいないなんて、スゲー不便で、きっと心細い思いをしているはずだ。 弱ってる時はなんかスゲー寂しくなって、誰かに傍にいてほしくなると思う。 だから恋人である俺が傍にいてあげたいんだ。 及川さんのアパートに着いて、チャイムを鳴らす。 及川さんが出てくるまで、ずっとソワソワして落ち着かない。 キョロキョロと辺りを見渡していると、 扉が開いて愛しい人、及川さんが出てきた。 「ハイ……え? 飛雄……」 付けていたマスクを外しながら、大きく目を見開いて俺を見つめてくる及川さんを見たら、なんでか涙が零れそうになった。 「あ、あの及川さん……風邪で休んでるって聞いて…その、会いに、来ちゃいました……」 あなたの姿を見ただけで、声がどうしても震える 及川さんへ触れようと手を伸ばした次の瞬間、 「飛雄!!」 及川さんが俺の腕を大きな力強い手で引っ張って、優しく抱きしめた。 「飛雄……会いたかった……」

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